ビジネス

2019.06.17

「新しい働く、学ぶ」を考える5つのKEY(前編)


「エキスパート・ゼネラリスト」のキャリアを歩む

橋本智恵 ミネルバ大学修士課程/EdTechWomen東京代表

「エキスパート・ゼネラリスト」をイメージした人物像が、私が通うミネルバ大学大学院をはじめ世界で注目されています。イーロン・マスクのような「多くの異なる学問分野、産業、国やトピックなどの知識をマスターし、原則をつなげ、応用する能力と好奇心を持ち合わせた人物」です。なぜ、これからは彼ら彼女らの時代なのでしょうか。

それは、人生のあり方が変わってきているからです。ミレニアル世代の50%は100歳生き、このうちMidlife(中年期)は35〜80歳。この45年で1つだけ専門分野を極めるのは、不確実性が高い時代には合いません。また、人間は自分が深く精通している分野と、他の分野の知識を知恵としてつなげることができます。イノベーションは、まさにその異なる知と知の新しい組み合わせによって生まれました。例えば、HIVやAIDSは、疫学や薬学だけでなく、行動保健学やジェンダー心理学など、多分野の知が組み合わさることで対策に弾みがつきました。このように、課題解決に向けて柔軟な姿勢で、創造的な解を発信していく中心人物こそが、エキスパート・ゼネラリストです。

とはいえ、人間は無意識に専門分野をひいきしたい衝動に駆られます。バイアスに対抗し知的謙虚さを保っていくためには、自らのキャリアを「Repurpose(元々もつスキルを目的に沿って応用)」することだと思います。

キャリア専門家は最低3つの専門分野スキルを身につけるとよいと言います。

メインスキル:主に長年のキャリア・学問分野を軸にしたハードスキル、第2スキル:マネジメント力など、主にソフトスキル、第3スキル:世界を見るビジョン。幼少期からくるその人ならではの興味対象です。

専門分野に迷う場合は、多分野横断型で考える力を養成することが効果的です。私自身、ミネルバ大学大学院で「多分野×多専門家×多国籍×多年齢層」の環境に身を置くことで、自分のこれまで持った偏った考えを取り払い、全体俯瞰する視点が養われました。

そして新しい分野では、好奇心を原動力に、5歳児がするような質問を繰り返すことが肝でしょう。これによって、自分の思い込みや偏見を払拭する答えが得られ、これまで培った知識と新しい知識をつなげていくことになりますから。
次ページ > 働き方のユートピアを探し求めて

文=Forbes JAPAN編集部

この記事は 「Forbes JAPAN 100年「情熱的に働き、学び続ける」時代」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

ForbesBrandVoice

人気記事