職人が作り出す、すべてがボーダレスなトートバッグ。
ファッションディレクターの森岡 弘とベテラン編集者の小暮昌弘が「紳士淑女が持つべきアイテム」を語る連載。今回は革小物やカバンなどを扱う「モロー・パリ」をピックアップ。
小暮昌弘(以下、小暮):このトートバッグ、マチに入ったプリントが個性的ですね。
森岡 弘(以下、森岡):今回は質の高いバッグや革小物などをつくるフランスのリュクスなブランド、モロー・パリのバッグです。
小暮:確か、19世紀初頭に創業されたブランドですね。ナポレオン1世の御用職人で金銀細工師、トランクメーカーであったマルタン=ギョーム・ピエネが始めた店が起源です。
森岡:20世紀に一時活動を休止していたのですが、2011年にクリエイティブ・ディレクター、フェドール・ジョージ・サヴチェンコが見いだし再生をした、今注目のブランドです。
小暮:このトートバッグは、「ブレガンソン」というモデルです。このブランドの顧客だったフランスの政治家、ROBERTBELLANGER(ロベール・ベランジェ)が居住していた南フランスのブレガンソン要塞に由来するそうです。
森岡:モロー・パリのアイコンとも言えるトートバッグですね。トートバッグは、かつては女性が使うものとして考えられていました。
小暮:昔は、欧米のブランドではトートバッグはウィメンズのコレクションに含まれていました。それを知らなかったのかもしれませんが、トートバッグを男性が使い出したのは、日本が先。その便利さに気づいた男性が使い始め、それを来日時に見た海外のデザイナーが次々とトートバッグをメンズ用として発表、世界中の男性がトートバッグを使い始めたのです。
森岡:モロー・パリのバッグコレクションは、これはメンズ、これはウィメンズと区別をしていないそうです。男女、どちらが使ってもいいと考えている。つまりボーダーレスなのです。
小暮:確かに、このデザインならば、男女、どちらが使ってもいいと思いますね。
森岡:いまはボーダーレスな時代です。ドレスクロージングとカジュアルの区分けも薄くなっていますし、ユニセックスで使える服やアクセサリー類も増えました。まさにそうした現代を象徴しているようなバッグだと私は思います。特にこのモデルは、サイドのマチにプリントが入っているところが洒落ていますし、ボルドーやグレーといった色もシック。男性でも女性でも似合うモデルです。