クラフトジンで世界をめぐる旅

オーストラリア、クイーンズランド州のジン蒸留所Granddad Jack's

世界的にクラフトジンのブームは加熱する一方だ。先週、上海の世界的に有名なバーに出かけたら、バックバーに「季の美」があったのには驚いた。

「季の美」はボタニカルに茶の葉や山椒など日本らしい素材を使用し、繊細な和の風味を感じさせることで人気の高い京都産のクラフトジンだ。「山崎」や「白州」など日本産ウイスキーの評価は上がる一方だが、クラフトジンも日本の細部にまでこだわったモノづくりの代表として世界へ進出していたのだ。

本題に入る前にまずはジンとはどんなお酒か、おさらいしておこう。ジンとは、大麦やライ麦、トウモロコシ、じゃがいもなど穀類から造るスピリッツをベースに、ジュニパーベリー、コリアンダーシード、アンジェリカなど、ボタニカルと呼ばれるハーブ類を数種加え、再蒸留させて造られるスピリッツのことだ。

一般にジンといえば、ビーフィーターやタンカレーなどいわゆるロンドン・ドライジンと呼ばれるカテゴリーの銘柄が浮かぶ。では、ロンドン・ドライジンとはなにか。それを知るにはイギリスの19世紀にまで遡る必要があるだろう。


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それまでのジンは低質なアルコールをベースに造られており、不快な味わいをごまかすために庶民は砂糖を加えて飲んでいた。この風潮から、砂糖を加えて造られるタイプのジンが一時代を築いていたという。

そこへ、18世紀後半から始まった産業革命がアルコールの蒸留にも劇的な変化をもたらし、それまでの単式蒸留とは異なる連続式蒸留器が開発されたことから、雑味のないクリアでドライなジンが造れるようになる。これがロンドンで爆発的なブームとなった、ロンドン・ドライジンの誕生だ。故にロンドン・ドライジンとは、それまでのスイートなタイプのジンと比較してのドライジンというカテゴリーを指す呼称であって、必ずしも生産地を示すものではないのだそうだ。

一方、クラフトジンとは少量生産で原料や製法にこだわりをもって造られるジンを指すが、実は味や製法に関する具体的な定義は設けられていないため、作り手の自由度が高いのが、このクラフトジンの面白いところでもある。
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文=秋山都 取材協力=クイーンズランド州政府観光局(www.queensland.com)

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