厳しい気候条件を乗り越える、オーガニック・シャンパーニュ生産者

ビュル・ビオ(Bulles Bio)のメンバー生産者たち


もちろん、ブドウ栽培にかかる手間や時間は増え、追加の労働力も必要となる。「良質なブドウを育て、良いワインを造りたい」という情熱がないと続かない。困難にも立ち向かう強い決意が求められるが、この団体の生産者たちは、皆明るく楽しい方ばかりだ。

10周年の記念パーティーでは、メンバーたちが集まってバンドを組み、生演奏を披露した。畑仕事が終わった後、多忙な合間をぬって、なかには片道2時間かけて練習に通った生産者もいたそうだ。パーティーは明け方近くまで盛り上がった。

代表のドケ氏は、ギターを担当していた。信念とやり遂げる強い意志のある彼だが、話してみると温厚で穏やかな人柄だ。「わたしたちには、ロックンロール精神が必要」と笑っていた。



キュミエール村のジョルジュ・ラヴァル

このビュル・ビオのメンバーに、ジョルジュ・ラヴァル(Georges Laval)という生産者がいる。シャンパーニュ地方でオーガニック栽培を早くから始めた一人であり、1971年から認証を受けている。

拠点は、エペルネの街から10分ほど車を走らせた、マルヌ川沿いのキュミエールという村。所有畑は2ヘクタールと小さく、生産本数が少ないため、ファンの間ではカルト的な人気を誇る生産者だ。


現当主のヴァンサン・ラヴァル(Vincent Laval)氏

この村のブドウ畑は、南向き斜面にあり、ブドウは太陽をよく浴びて育ち、成熟度が高い状態で収穫できる。ジョルジュ・ラヴァルのワインも、果実味と丸みがあり、ブドウの熟度が高いので、ドサージュがなくとも(ブリュット・ナチュール)、均衡が取れている。

ヴリニー村のルラージュ・プジョー

ランスの街から車で15分ほどのヴリニー(Vrigny)村に拠点を持つ、「ルラージュ・プジョー(Lelarge-Pugeot)」は、ビオディナミ栽培を実践するメンバーの一人だ。

現在は、7代目のドミニク氏が当主を務め、約8ヘクタールの自社畑からワインを造る。2000年から除草剤の使用を止め、2010年にオーガニック栽培に転向した。2015年にオーガニック認証を取得。その後ビオディナミ栽培に移行し、2017年にはビオディナミ栽培の認証を受けている。
次ページ > 「より良い畑を残したい」

文=島 悠里

ForbesBrandVoice

人気記事