熟成に実に16年を要するというプレスティージシャンパーニュ「ドン ペリニヨン ヴィンテージ2002 プレニチュード2」が誕生。世界に先駆けてハワイで行われた発表会から、その魅力を探る。
「Come quickly, I am drinking Stars!(ちょっと来てくれ、まるで星を飲んでいるようだ!)」とは、修道僧ドン・ピエール・ペリニヨンが初めてシャンパーニュをクリエイトしたときにもらした言葉。時は1668年、フランス、シャンパーニュ地方エペルネ村の小さな修道院でもたらされた奇跡が300余年を経た現在、フランスから1万2000キロ離れたハワイ島で起きようとしていた。
それは「ドン ペリニヨン ヴィンテージ2002 プレニチュード2」が世界に先駆けて発表される機会であった。なぜハワイ島で?世界各国から招待されたゲストは誰もがいぶかしく思っていたと思うが、その理由をつまびらかにする前にプレニチュード2とは何か、おさらいしておきたい。
ドン ペリニヨンにおけるプレニチュードとは、シャンパーニュの成熟度を示すステージといえばわかりやすいだろうか。ドン ペリニヨンはすべて単一の年に収穫されたブドウからつくられており、醸造プロセスにおいてもっとも大切なのは“時間”である。時間、つまり熟成を重ねるにつれエネルギーが高まっていくドン ペリニヨンは、通常8年をかけて最初のプレニチュード、つまりバイタリティのピークへと到達する。
そしてさらに8年……それまで以上に凝縮され、輝きをさらに増したヴィンテージはあらゆる次元で拡張し、深く、力強く、新たな寿命が授けられる—この新たなピーク、高まりこそが「プレニチュード2」だ。つまりこの日発表されたのは、2002年に収穫したブドウを使用し、2003年に瓶詰。その後、熟成に実に16年を要したプレスティージの高いシャンパーニュというわけである。
この日、ハワイ島へと集まったゲストは夜のマウナケアビーチにいた。月光と松明の灯りにぼんやりと照らされたビーチで、静かに打ち寄せる波の音を聞きながら、「ドン ペリニヨン ヴィンテージ2002 プレニチュード2」の栓を世界に先駆けて抜く。その香りを楽しみ、ひと口含み、空を見上げれば—そこには星、星、星!まさに「I am drinking Stars!」な瞬間であった。しかし、この一瞬のためにハワイ島へ?
「溶岩の島であるハワイ島は大地、そして宇宙のエネルギーに満ちた場所です。ドン ペリニヨンの醸造プロセスとは、大地の産物であるブドウを人間の叡智と時間をかけてより高みへともっていく作業であり、プレニチュード2は人と大地、空をそれぞれつなぐ媒介のような存在だと私は考えているのですが、この大地と宇宙のエネルギーに満ちたハワイはプレニチュード2の精神性を語るにふさわしい場所だと考えました」と語るのはヴァンサン・シャプロン氏。
28年の長きに渡ってドン ペリニヨンを率いてきたリシャール・ジェフロワ氏より醸造最高責任者を年初に継承し、次世代のドン ペリニヨンを率いる若きリーダーである。
「さらに、プレニチュード2を語る上で欠かせないのはエレベーション(上昇・昇華)という言葉です。大地の恵みであるブドウをシャンパーニュに仕立て、そこから時間という魔法をかけて熟成させ、さらなる高みで第二の生命をもたらすという、醸造プロセスそれ自体がエレベーションだといえるでしょう」
なるほど、今回の発表会中、ゲストはビーチのほか、太古の時代に生まれたという溶岩洞から標高4200mに位置するマウナケア天文台、さらにはヘリで飛翔し空からハワイ島を望むなど、さまざまな視点からプレニチュード2に向き合った。地底から山頂、そして空までの移動もまたエレベーションであり、ゲストは物理的に、そして精神的にさらなる高みを得たプレニチュード2を味わいつくしたといえる。
満天の星の下で行われたガラディナーでシャプロン氏は言った。
「まだ宇宙は3%しか解明されておらず、残り97%は未知の世界です。ドン ペリニヨンのポテンシャルがどれほどあるか、それもまだまだ未知の部分が残されています。人類の叡智をもってすれば、ドン ペリニヨンはもっと高く、力強く、深く進化していけることでしょう。私はそのポテンシャルに静かに闘志を燃やしています」
奇しくもこのインタビューが行われた19年4月10日、人類は史上初めてブラックホールの撮影に成功した。97%のまだ見ぬ宇宙が小さな扉を開けた日、ドン ペリニヨンの奇跡を求める物語にはまた新たな一章が加えられた。その符合は偶然ではあるまい。
Shinji Yoshikawa × Gen Miyazawa「ドン ペリニヨン ヴィンテージ2002 プレニチュード2」を語る
世界で活躍するビジネスパーソンの眼は「ドン ペリニヨン ヴィンテージ2002 プレニチュード2」をどう捉えたのか。
ハワイでの初披露に招かれた吉川慎二氏と宮澤弦氏、ワインコレクターとしても知られるふたりが語る。
投資家・経営コンサルタント、ワイン愛好家の吉川慎二(左)、ヤフー株式会社常務執行役員メディアカンパニー長の宮澤弦(右)宮澤氏(以下M):最初に、ワインエキスパートでもある吉川さん、2002年のプレニチュード2を飲んだご感想を聞かせてください。
吉川氏(以下Y):まず立ち上る泡が星のようでした。シトラスのベースに、オリエンタルなハーブのニュアンスが感じられて、香り・味わいともに非常に複雑。時が経つごとに違う貌を見せてくれるような刺激的な一面もあるのに、口当たりはマイルドでクリーミー。まさにぼくのようなシャンパーニュでしたね(笑)。
M:プレニチュード2は第二の生命を与えられたドン ペリニヨンだと醸造最高責任者のヴァンサン・シャプロン氏も説明していましたが、吉川さんはいまプレニチュード2を迎えているんでしょうか(笑)。
Y:最近お会いする方はぼくのことを“ワインの人”だと思ってるようなんだけど(笑)、実は元来は“金融業界の人”でして。ちょうどこのシャンパーニュに使用されているブドウが収穫され、瓶詰めされたころは外資証券会社で猛烈に頑張っていました。その後、フルタイムの仕事を退いたことを考えても、あのころが自分のキャリアでひとつのピークだったと思います。だからこうして第二のピークを迎えているシャンパーニュを飲むと、「おまえももう一花咲かせろよ」と励まされているようでうれしいんですよね。宮澤さんは、16年前はまだ学生だったでしょ。
M:私は大学で光合成を研究していました。だから大地で育つブドウが太陽と時間、そして人の叡智を得て、熟成しながら進化して、このような芸術品にまで昇華されることが本当に奇跡だなと思えるんです。人生100年時代ともいわれていますし、私はいまようやくプレニチュード1に達したといったところでしょうか。
Y:今回、ヴァンサンはエレベーションという表現を使っていましたね。でもそれも、単純に下から上に上昇するという一元論ではないと思うんですよ。 ぼくはこのシャンパーニュにトランスフォーメーションと言い換えられるような魅力を感じたんだけど、宮澤さんはどうですか?
M:私も多面的な拡張を感じました。地下の洞窟や、ヘリでの空中散歩、そして天文台に行ったのは、虫、鳥、そして宇宙の視点を得るためじゃないかなと思っていて。これはワインを造る上でも欠かせない観点なのではと推察しているんです。
Y:なるほど、人間も成長すれば多面的な魅力を持つようになるものね。でも、ドン ペリニヨンのように厳選したブドウのみを使用していても、プレニチュード2の状態を得られるシャンパーニュは全体のわずか9%。さらに第三のピークを迎えるプレニチュード3となれば1%しかないそうですよ。
M:狭き門ですね。私も人生のプレニチュード2、さらに3を迎えられるといいのですが。
Y:いつデゴルジュマン(澱抜き=熟成が終わったとみなす)が来てもいいように頑張らないといけませんね(笑)。ぼくも大いに勇気づけられました。
ドン ペリニヨン ヴィンテージ 2002 プレニチ ュード 2 ギフトボックス
Dom Pérignon Vintage 2002 Plénitude 2 Gift Box
度数:12度
容量:750ml
希望小売価格:54,600円(税抜)
全国業務店および全国主要百貨店にて 2019年6月より順次販売開始
お問い合わせ:MHD モエ ヘネシー ディアジオ(Tel.03-5217-9732)
吉川慎二◎投資家・経営コンサルタント、ワイン愛好家。1962年三重県生まれ。東京大学法学部卒業、シカゴ大学ロースクールLLM修了。三井住友銀行、メリルリンチを経て、現在は独立。12年「全日本ワインエキスパートコンクール」優勝。14年より日本ソムリエ協会理事を2期4年務めた。
宮澤弦◎ヤフー株式会社常務執行役員メディアカンパニー長。1982年北海道生まれ。2004年東京大学農学部卒業直後にシリウステクノロジーズを創業。10年8月、ヤフーにより買収後、YDN(インタレストマッチ)のプロジェクトリーダーを経て、14年4月より最年少で執行役員に。検索サービスカンパニー長を経て、2016年4月より現職。