高級車メーカーが続々と女性向けサービスを強化する理由

(Getty Images)

初めて自分で車を買って、運転した時のことが忘れられない。劇的に拡がる行動範囲。ステアリングの手触り、革のシートの匂い、カーステレオの響き。夜風を感じながらのドライブの爽快感。車を所有すること、操ることへの喜びは性別も年齢も問わない特別なものである。

高級車メーカーが、女性に向けたサービスを続々と展開している。女性のオーナーや女性ドライバーが増加しているためだ。

日本自動車工業会の乗用車市場動向調査(2017年度)によると、乗用車のユーザー層は継続して女性が増加しており、主運転者における女性比率はほぼ半数になったという。

女性オーナーやドライバーが存在感を増す背景には、女性活躍の高まりや、車の購入時の意思決定における影響力の高まりがある。女性の運転免許保有者数も年々増加、免許保有者の構成率における女性の割合も増加傾向にある。

「国際女性デー」に、マセラティ女性オーナーの集いを開催 

今年の3月8日の「国際女性デー」にイタリアのスーパーカーブランド、マセラティが東京・銀座で開いたのは、マセラティの女性オーナーたちを招いたイベントだった。

国際女性デーを象徴するミモザ色を身に着けたオーナー約80人が集い、プロセッコのグラスを傾けた。会場に流れたのは、世界初の女性F1ドライバー、マリア・テレーザ・デ・フィリッピスの動画。1955年よりマセラティの公式ドライバーとして活躍し、人生の大半をレースに捧げた。



「怖さなど微塵も感じたことはなかった」「『マセラティを駆ける』という感覚は今もなお、私の人生に大きな喜びを与え続けている。そして自信を持って『あなたもそう感じる』と言える」

初の女性F1ドライバーの金言に、集まった女性オーナー達が頷いていた。


マリア・テレーザ・デ・フィリッピス(マセラティ提供)

なぜマセラティはこのようなイベントを開いたのか。

「クルマというと男性向けのコンテンツになりがちですが、購入するときに強い決定権を持っているのは女性でもありますので、女性のお客さまがブランドに共感いただけるような機会の創出ということで企画しました」

マセラティでは本社の役員やマテリアルデザイナーなど重要なポジションに女性が就いており、ブランドの魅力とともに女性をエンパワーメントする姿勢を示したとも言える。女性オーナー同士、良いネットワーキングの機会となったようで、あちこちで会話が盛り上がっていた。マセラティでは今年、女性向けのゴルフイベントも予定しているという。

1割程度だったマセラティユーザーの女性比率を2割に押し上げたのは、マセラティ初のSUV「レヴァンテ」だ。レヴァンテ単体でみると3割近くのドライバーが女性だという。目線が高く視界が広く取れ、荷物も載せやすいSUVは女性人気の高まりも受け、ここ数年高級車メーカーが相次いで市場に投入している。


人気のSUV「レヴァンテ」(マセラティ提供)

なんと中国では、マセラティオーナーの女性比率が4割を超えるという。「中国メディアによると、成功した男性が買うのがフェラーリ、成功した女性はマセラティというイメージがあるそうです」と担当者。

アウディの女性向けドライビングレッスン 緊急時の対応も学べる

アウディ ジャパンは7月、千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイで女性ドライバー限定の運転講習プログラムを始めて開く。同社は2001年より、アウディオーナーに向けて安全に楽しく運転するためのドライビングスキルを提供する運転講習プログラム「Audi driving experience」を提供し、今まで約3000人が受講してきた。

そのプログラムの一環として、新たに女性ドライバー限定の「Audi women’s driving experience」を企画した。日常ではなかなか体験できないアウディのパフォーマンスや安全性能を体感できるドライビングレッスンで、アウディ公認インストラクターのもと、クローズドの安全な場所で基本的な操作から緊急時の対応まで学べるという。最新の安全機能も体感できる。


Audi driving experienceの様子(アウディ ジャパン提供)

アウディ ジャパンによると、車の購入時に女性が決定権を持つケースが多いため、アウディを安全にエレガントに運転してほしい、との思いから企画した。女性は特に、丁寧な車のつくりや上質な素材、デザインに着目して車を選ぶ傾向にあるという。特に女性に好まれているのはプレミアムコンパクトスポーツモデルの「TT ロードスター」。オープンモデルは周囲の注目を集めることもあり、女性に人気があるという。

同社によると、女性ドライバーが陥りやすいのは、運転ポジションに対する誤解。ステアリングにしがみつきがちの人も少なくないという。また、危険回避時に思いきりブレーキを踏むことを躊躇しがちでもあるという。女性がもっと安全に、楽しくステアリングを握れるよう、ドライビングにまつわる不安や誤解を解き、実践的なスキルを身につける機会となりそうだ。

開催日は2019年7月26日、申し込み受付は6月23日まで。使用モデルはAudi S4 / S4 Avant / RSモデルなど。参加料3万5000円 (税込、ランチ、傷害保険を含む) 。定員15人。

文=林亜季

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