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共同創業者のキム・テジン(左)とベック美穂(右)

──イスラエル在住の日本人が、訪日外国人向けのサービスを立ち上げる上で、メリットとなるのは、どのようなポイントですか?


スタートアップ大国と言われるイスラエルですが、国が小さいこともあり、ほとんどの企業は最初から世界市場を目指しています。グローバルな視点で事業を展開する事が当たり前で、その経験やノウハウが蓄積されています。そのような環境の中で、スタートアップとして学べる事はとても多いです。

私達はテルアビブ郊外のラーナナという街を拠点としていますが、地元の自治体が運営するスタートアップハブを本拠に、現地の起業家と意見を交換しながら、事業の拡大に向けてプランを練っています。

また、共同創業者のキム・テジンは韓国人で、韓国の旅行者が日本への旅に求めるニーズも理解しています。

私は2005年から夫の故郷であるテルアビブに住み、日本市場へ参入を目指す企業向けにコンサルティングの仕事をしてきました。テジンも同時期にイスラエルに住むようになり、子育てをしながらイスラエルと韓国のビジネス開発に携わってきました。

以前から仕事仲間だった彼女に「旅のプラットフォームを立ち上げよう」ともちかけたところすぐに意気投合して、2018年8月にトリップジャンクションを法人化。投資事業会社の「チャータードグループ(Chartered Group)」からシード資金を得て、サービス始動に向けた準備を整えました。

──起業の背景には、女性たちを応援したい気持ちがあったと聞きました。

トリップジャンクションは子育てなどで、フルタイムで働けない女性たちが、自分のスキルを活かして稼げるプラットフォームを目指しています。私自身、2人の10代の子供の母親ですが、下の子も12歳になり、子育てが一段落したタイミングで起業しました。

トリップジャンクションにホストとして登録している日本人の多くは、語学が得意で、外国人にアピール可能な趣味や特技を持つ女性たちです。彼女たちに、自分の個性を活かしながら日本料理や習字などの日本のカルチャーや、街の魅力を外国人に伝えてほしい。

私が20数年に最初の海外旅行に出かけた頃と比べると、今はインターネットが発達して趣味の合う人同士がつながりやすくなったけれど、旅行分野ではそのメリットがまだ十分浸透していない。トリップジャンクションは、同じ趣味や関心事を持つ人同士をつなぎ、ホストたちが自分のスタイルで旅行客をもてなし、収入を得られるプラットフォームにしたいと考えています。

日本には素晴らしい観光地がたくさんありますが、外国人がみんな神社や伝統文化に関心がある訳ではない。私が音楽を通じて旅の楽しさを知ったように、ホストたちが様々な領域で日本をアピールし、海外の人に日本の良さを伝える場となることを目指しています。

有名な観光名所がない地域でも、地元の人が面白い体験を提供する事で魅力的な旅の目的地にすることが可能です。また、観光地ではない日本を見てみたいと思っている旅行者はたくさんいます。今後、外国人にもっと訪れてほしい市町村との連携にもチャレンジして行きたいです。

エクスペリエンス分野では、様々な企業の競争が起こっていますがトリップジャンクションの立ち上げを控え、私とテジンは何度も日本を訪れ、ホストたちと面談を行いました。むやみに規模を拡大するのではなく、きちんと質を担保できる個人や企業を、サービスの提供側として迎え入れようと思っています。

私は15歳と12歳の子供を持つ母親として、子供たちにはいろんな体験をしてほしいと考えています。世界には自分とは全く違う境遇で育ち、違う考えを持つ人たちがいる事を、実際に人と交流する事で体験してほしい。

旅先での体験を通じ、違う文化に触れる喜びを多くの人たちに知ってほしい。私が体験したようなわくわくする思いを共有してもらいたいというのが、トリップジャンクションを立ち上げた思いのルーツです。


ベック美穂◎法政大学英文科在学時代から体験型の旅にハマる。卒業後1年間のイギリス留学を経て、帰国後は大手英会話スクールで講師をしながらアジアやヨーロッパを個人で旅行。現地の人との交流が旅行を特別な体験に変える事を実感した。2005年からイスラエル在住。12年間、2人の子供を育てながら、インターネットサービス系企業の日本市場参入コンサルタントとしてプロダクトマネジメント、Webマーケティングに従事。2018年にTripJunctionを設立、訪日旅行者にユニークな現地体験を提供するサービスを立ち上げる。将来はアジア圏の現地体験プラットフォームとしての拡大を目指す。

構成=上田裕資 イラスト=Luke Waller

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