眞敬寺では、「門戸を開いて、宗派関係なく集った人に仏教の世界観に触れてもらいたい」という願いから、一般の人が利用しやすいように多様なイベントを開く。
講師を招いてヨガを開いたり、住職自らが呼吸瞑想を教えたり、仏壇に飾るために多肉植物で寄植えを作ったり…。
中でも人気なのは「死の体験旅行」だ。自分が亡くなるという少し悲しいストーリーのもと、大切なものを25個ほど書き出し、一つずつ手放していく。最後に残るものは、自分にとって最も大事にしたいもの。「寂しいけれど、手放さなければならない時が来る。今を大切にしようと思えます」と住職は語る。
意外と参加者の年齢層は30〜80代と幅広い。
ヨガマットが敷かれた副本堂
「暗闇婚活」というユニークな婚活イベントも開く。気になる相手を視覚からの第一印象だけで選ぶのではなく、声や話し方、匂いなど雰囲気を感じ取ってもらおうという狙いだ。一緒に念珠やお香作りをして、仲を深めていく。
お寺のテック化
そもそもなぜ、ここまでモダンな建物にしたのか。住職に問うと、切実な思いが返って来た。
「愛知の念仏道場から550年の歴史があり、東日本大震災で本堂は半壊。1年間は余震で倒れてしまうんじゃないかと思うこともありました。これから50年、100年と愛してもらえるような寺にしたいと考えた時、今まで通りでは需要がないと思いました」
また、長年ある悩みを抱えていた。
「ご縁はつながっていくものですが、特にお寺という職種上、人材がなかなか集まらないんです」
寺の職員を募集すると、「御朱印を集めるのが趣味」「巫女経験あり」といった、募集職種とは関係なく応募されるケースが多い。だが、一般的なイメージとは違い、実際の仕事内容は地道なものだ。
回忌法要や発送物の管理、過去帳に当たる納骨者リストの更新…。
さらに眞敬寺の場合、冒頭の「テック化」が進んでいる。少なくとも7000の厨子の管理が必要で、宗旨・宗派によってもそれぞれ戒名・法名など細かい違いがある。その管理は「マンパワーじゃ追いつかない」と、エクセルで独自の「顧客管理システム」を構築し始めたのだ。