「イギリス料理は不味くない」 チェーン店のパブで感じた違和感の真実

5月の連休明け、ロンドンに出張した。3年程かけて、現地の老舗インテリア百貨店とのコラボで、岐阜県の家具や陶磁器等を中心としたクラフトフェアの開催にこぎつけたのだが、伝統を重んじプライドの高いイギリス人とのビジネスの難しさを、まざまざと実感する3年間だった。

百貨店とコラボの前、現地調査を始めたのが2012年なので、足掛け7年程この街に通ったことになる。7年の間に、この国は揺れた。2012年の初冬に訪れたロンドンは、オリンピックを成功裏に収めた後で、かなり活気づいていた。街が綺麗になり、新たなエリアの再開発も始まっていた。新しいデザインのロンドンバスも走っていた。

2016年には、国民投票の結果、EU離脱(ブレグジット)を決めた。とはいえ、ロンドン市民の多くは、EUからの離脱で、経済が実際はどうなっていくのかよくわかっていないという印象も受けた。

百貨店側のクラフトフェアの責任者に、ブレグジットの影響で、もしポンドが急落したら商品の卸価格に影響する為替の調整はどうするのかと訊ねても「どうなるかわからないので、いまは決められない」の一点張りだった。

今回、ブレグジット期限が、10月31日まで再延長されることになり、5月に3週間行われた私たちのフェアも、為替や関税の問題などが生じることもなくホッとしたのは言うまでもない。フェア自体も好評のうちに終わり、売り上げも順調で、この7年間に、日本製品や和食など、日本そのもののブランド力が確実に上昇したことを実感した。


イギリスの老舗インテリア百貨店とのコラボで、岐阜県の家具や陶磁器等を中心としたクラフトフェア

「イギリス料理は不味くない」

さて、イギリスと言えば、パブが有名なのは多くの人が認めるところだろう。イギリス国内に5万数千軒はあるという。

「パブで1杯、引っ掛けて行きましょう」なんて気軽に言えれば素敵なのだが、あまりお酒の飲めない私は、到底そんな言葉が似合う人にはなれない。とはいえ、現地の知人に誘われると、うきうきしながらついて行く。それは現地の人たちに連れて行ってもらえる素敵なパブには、必ず美味しいイギリス家庭料理があるからだ。

イギリスの食は、「美味しいものがない」とか「フィッシュ&チップスばかりでうんざり」などとよく言われるが、私は決して「不味くない」と思う。どこの国にも不味いお店もあれば、美味しいお店もある。イギリスもしかり。最近は、日本食ブームの影響もあって、イギリス、なかでもロンドンには、素材を大切にした、繊細な味覚を供するレストランも多数存在するようになった。
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文=古田菜穂子

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