ビジネス

2019.06.17

環境経営がもたらす「イメージアップ」以外のメリットとは?

大川印刷代表取締役社長 大川哲郎(左)スターバックスジャパン店舗衛生・環境推進チーム普川玲(右)

「ごみゼロの日」として5月30日に渋谷で開催された「530 conference 2019」。環境問題を考慮した取り組みを進める企業の担当者たちのトークセッション、ワークショップが行われた。

廃棄物を資源としてビジネスに結びつけることで、社会課題の改善を目指す循環型経済「サーキュラーエコノミー」の実現のために企業ができることとは。

特に筆者の印象に残った「スターバックスジャパン」店舗衛生・環境推進チームの普川玲と、老舗印刷会社「大川印刷」代表取締役社長 大川哲郎が語った。


──まだ「環境経営」を実現できていない企業が多い中で、両社はともに循環型ビジネスを実践されています。どのようなきっかけがあったのでしょうか。

大川:私が6代目経営者になる前、同業他社の修行から自社へ戻ってきた1990年代後半はバブル崩壊直後で、どんどん売り上げが下がっていた時代でした。「良い時代」を知る社員さんが多い中、会社の改善、改革を本気で考えている人は少なかった。

世間一般的にも、環境問題には関心が低かった時代です。当時、「リサイクルペーパーにはR100と書いておけば、お客さんなんて見分けがつかない」なんてことを言う心ない経営者の人もいました。

業績が低迷する中で、何とか競争優位性を高めたい、そして自分が好きなことと仕事を一致させて楽しみたいと思いました。私は当時から環境問題に関心があったので、まず、企業を持続的に発展させるために地球環境と調和した経営を行う「環境経営」にシフトしました。

当時の印刷会社の環境に対する取り組みとしては、紙やインクを環境に優しいものに変えることが中心。だからリサイクルペーパーのリサイクル率を上げることが、新しいビジネスチャンスなるのではと思って始めました。

当時の理念は今も社に根付いています。印刷事業から排出される年間の温室果ガス(CO2)を算定し、その全量の打ち消し活動(カーボン・オフセット)として製品の配送、納品の際にも環境に配慮した取り組みを続けています。

──大川さんは経営者として行く先を考えて実践されたこともあると思います。普川さんが、「コーヒー豆かすリサイクルループ」に取り組み始めたきっかけは何だったのでしょう。

普川:十数年前に、コーヒー生産地であるコスタリカを訪れたことです。手摘みした実を剥いで、天日で干して、すごく手間をかけて作っているのに、日本でドリンクとしてお客さまの手に渡った後はあっという間にかすになって捨てられることが、すごくもったいなく感じました。

せっかくだから、何かに再利用することはできないかなと思ったんです。

多くの人の協力もあり、現在1400店舗あるうちの250店舗のスターバックスから出るコーヒーを抽出した後の大量の豆かすをリサイクルして牛の飼料や野菜を育てる堆肥にしています。

牛の飼料になれば、それを食べた牛のミルクを店舗で使う。堆肥になれば、それで育った野菜がまたサンドイッチの具になって戻ってくるという循環型の取り組みをしています。
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構成=守屋美佳

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