──環境経営は、ビジネス的に具体的な成果は出ていますか。
普川:2015年、「コーヒー豆かすリサイクルループ」の取組みで農林水産省「第2回食品産業もったいない大賞」の「農林水産大臣賞」をメニコンさんと連名でいただきました。
そうするとやはり、外部の評価がついてきました。
4万人ほどいるアルバイトのパートナー(従業員)は学生も多いので常に入れ替わっているのですが、環境に配慮した取り組みをしている会社だから働きたいと応募してくれる方もたくさんいます。努力した甲斐がありました。
個人的な成果として感じているのは、餌や堆肥を使うことで、直接農家さんとお話する機会ができたこと。ミルクを仕入れるときには、乳業メーカーさんが間にいてくれるので、農家さんと直接会う機会はなかったんです。
農家さんの思いを直接お聞きすると、本当に丁寧に作られた大切なものを使わせていただいていることを実感します。
自分たちが提供している商品への理解が深まると、お客さまへの説明も変わります。背景を理解してストーリーを伝えられるようになると、お客さまも大事なものとして扱ってくれるという印象があります。
大川:私どもは「第2回ジャパンSDGsアワード」や「環境大臣賞」をいただいたことによって、様々なカンファレンスなどにも呼んでいただくようになりました。
昨年横浜であった「世界循環経済フォーラム2018」で、海外の企業の方々に関心を持っていただき、今もサーキュラー・エコノミーに関するイベントがあるとご連絡をいただくようにもなりました。
私たちのような小さい企業は、これからさらに少子化が進み、縮小する国内マーケットでどう事業を継続すべきか真剣に考えています。だから、海外との繋がりができるのは、経営者としてもありがたいですね。
また、実際に自分たちの仕事と社会課題とのつながりが見えることによって、従業員さんたちが新たな使命感を感じて、モチベーションがアップしているのも嬉しいです。
7年間パートタイマーを勤めていた女性が、正社員になってSDGsのプロジェクトチームリーダーに手を挙げ、自分の企画でイベントをその4カ月後にやったんです。彼女は今、管理職に負けないくらい使命感を持って仕事に取り組んでくれています。
──これから取り組みたいこと、現状の課題を最後にお教えいただけますか。
普川:他社さんから、コーヒーの豆かすをバイオガスの燃料や、牛の敷料、あるいは堆肥として、ホームセンターで一般の方に売りたいというアイデアをいただくことも多くなってきました。
でも、「再生利用事業計画」という計画を企業ごとに関連省庁へ出さないと、荷物を輸送した後の「戻り便」が使えないという制約があり、実現は難しいんです。担当者としてはそういったことが多くの会社とできるように法整備が進むといいなと思っています
大川:印刷業界って斜陽産業と言われていますが、印刷会社自体が全ての業種業界に入り込んでいるからこそ、全ての業種業界とアライアンスが組めることもあります。
先ほどの普川さんのお話にあったように、「こういう専門家、知らない?」と聞かれた時に人をつなぐことは、印刷会社だからできることでもあります。だからぜひ、とんがった取り組みをする地元の印刷会社さんと組んでみて欲しい。
廃棄物自体を紙に展開することなんかは、どんどん私どもに相談してください。
現在、年間で400人ほどの方が大企業から見学に来てくれているのですが、なかなか取引まで至らない。それは、既存のサプライチェーンの中では中小企業を入れることができない「ルール」があるからと聞いています。
でも、そこを一歩突っ込んで、部分的にでもゼロカーボンを目指す印刷物を作ってみることなんかを提案してみたいですね。今日お話をさせていただいたように、環境経営でよくなることって、たくさんありますから。