ビジネス

2019.06.14

ReTechで日本の不動産業界の「いびつな市場構造」を革新する|GA technologies 樋口龍

GA technologies 樋口 龍




ReTech領域NO.1に向けた飽くなき野心

──中古不動産、リノベーション市場にテクノロジーを入れていくというのはかなり独自性が高いと思いますが、参入時にどのように検討がなされたのでしょうか?

我々は、ReTech、中古不動産領域でNo.1を目指していますが、その背景には、日本における不動産業界のいびつな実態があります。

日本は人口減少の局面に入っているにも関わらず、毎年新築物件が100万戸も建っています。本来、OECD加盟国のような先進国であれば人口減少に対して新築物件の抑制がかかってもおかしくない。日本も40万戸ぐらい建てれば充分なはずなのです。

加えて、アメリカやヨーロッパは、中古物件が8割で新築はたったの2割。対して日本は、中古が2割で新築が8割です。これは、市場構図として絶対におかしい。

そこで、我々は中古不動産のカテゴリーを狙っていこうと決めたんです。

──確かにいびつですね……。なぜ“新築志向”の価値観が日本人に根付いたんでしょうね。

そもそも日本人は、古いものを大切にする文化を持っているじゃないですか。でも、不動産だけは新築が好き。なぜかというと、第二次世界大戦以降、政府の方針で「新築マンションを建てましょう」という価値観が植え付けられたからです。建てることで経済が発展するというロジックですね。

例えば、3000万円の物件を建てると、6000万円の経済効果があるといわれています。その根拠は、1つの物件を買ったら、自動車を買おう、家電を買おう、家具を買おうと消費が促されるからです。

だから、日本人はずっと「新築がいい」という刷り込みのまま進んできた。我々としては、そこを変えていかなければいけないだろうと考えています。

──いびつな市場構造をテクノロジーで是正しようと考えていらっしゃるわけですね。

はい。日本で中古不動産が広がりにくい要因は3つあります。

1つ目が、テクノロジー化の遅れ。2つ目が、情報の非対称性。3つ目が、人材(エージェント)レベルの質。この3要素がベストプラクティスではないので、顧客が中古不動産を買いづらいイメージを抱くのです。

不動産業界のアマゾンを目指しています。アマゾンは流通を変えました。我々は不動産流通を変えようと思っています。

その為に中古不動産のプラットフォームである「RENOSY(リノシー)」を立ち上げました。

不動産を購入するプロセスには、学習、検索、購入、アフターフォローという4段階があります。大手の不動産情報サイトは、学習と検索の部分を請け負い、その後の購入とアフターフォローは不動産会社にバトンタッチする分業制のビジネスモデルが従来の形でした。

──そこから御社はどのように変えたのでしょうか?

我々は、学習、検索、購入、アフターフォローまでを、テクノロジーを軸として一気通貫で行い、カバレッジが広いビジネスモデルとしました。

テクノロジーの活用により一気通貫したサービスにすることで、物件検索のしづらさや「周辺の情報が少ない」といったことから、購入後の満足度にいたるまで、顧客から即時にフィードバックが届くようになります。それにより、改善すべき購入プロセスの特定と、打ち手が正確に見極められるわけです。

従来型のサービスではシステムだけを改善していました。不動産業界3つめの課題である「人材(エージェント)レベルの質」が改善しないとユーザー体験はベストプラクティスになりません。アマゾンのサイトがすごく使いやすくても、荷物が届くのが遅ければユーザー体験としてダメですよね。

不動産購入もサイトが使いやすくても、購入時のエージェントの対応が悪ければ不動産購入のユーザー体験はベストにならないのです。

我々はサイトの使いやすさだけではく、一気通貫でプラットフォームを運営しているためリアルのエージェントの質も拘ることができるのです。不動産購入プロセスをベストプラクティスにするにはテクノロジーとリアルの融合が絶対条件なのです。

このようにして、(1)テクノロジー化(活用)の遅れ、(2)情報の非対称性、(3)人材レベルの低さの3つすべてを変えていくことを目指しているのです。
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文=下平将人 提供元=Venture Navi powered by ドリームインキュベータ 撮影=ナカサアンドパートナーズ

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