軍学校も導入 フランス発「ありえない」アート思考ワークショップができるまで

「来るAI時代、ビジネスパーソンに求められるものはクリエイティビティである」

そんな言葉をもう飽きるほど聞いている人は多いはず。それでも繰り返し言われるのは、正体がよくわからない「クリエイティブ」に対して、どう身につければいいのか、何をすればいいのかわからない人が多いからでもある。

私は企業の新規事業企画・プロデュースや組織の意識アップデートを依頼されることが多く、ここ数年色々と試行錯誤をしてきた。今まで接点のなかった方々を招いて企業内ワークショップを実施したり、稲作やヨガを行ったり、自身が海外で見聞してきたものをレポートし発信をしてきた。

そんなとき、2017年秋にスタンフォード大学の准教授チャック・イーズリーと出会い、フランス発の「Art Thinking Improbable Workshop」というワークショップの存在を教えてもらった。私自身がもともと芸術的表現、芸術家の思想・行動が好きだったことに加えて、「ビジネス×アート」の掛け算に興味があり、早速チャックにそのワークショップの主宰を紹介してもらった。

その後2018年初頭、実際にパリに行きそのワークショップを数回受講してみた。期間は3日間。アーティストを講師に迎え、自分の内に秘めた自発性・創造性に気付き、行動を起こすためのワークショップを受講した。

そのときに改めて、クリエイティビティは今後ビジネスパーソンに必須なスキルのひとつであると実感し、日本でも展開したいと考え交渉した結果、孫泰蔵氏率いるミスルトウの協力を得て2018年夏から日本でも展開している。

実はスタンフォード大学でも、2018年からこの「Art Thinking Improbable Workshop」が導入されている。もともとデザイン思考を用いてテクノロジーに強い起業家を育てるプログラムを実施していた前述のチャック・イーズリーが、ワークショップの効能に可能性を感じ導入したのだという。

フランスだけではなく、北米、日本、そしてヨーロッパ各地で火が付き始めている「Art Thinking Improbable Workshop」。これを世界各地で実践している講師やアーティストが一同に介するグローバルカンファレンスが、2019年5月に初開催された。そこでは、各国展開状況の共有と、今後当ワークショップを活用してどのように自発的で創造性溢れる人材を増やしていくかについて、2日間かけてディスカッションされた。

開催場所はヨーロッパ最大級の現代美術館であるポンピドゥ・センター。「Art Thinking Improbable Workshop」を各国で開催している講師やアーティストに加えてポンピドゥ・センターのディレクターであるマリオン・ラポルテや、ルーブル美術館のディレクターも参加し、パリの美術館としてもアートとビジネスをつなぐこの試みに積極的に関与している姿が伺えた。
次ページ > 「ありえない状況」というキーワード

文=西村真里子

ForbesBrandVoice

人気記事