AI通信「こんなとこにも人工知能」

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ヒュンダイ自動車が、イスラエルのスタートアップ「MDGo」に投資した。自動車による事故発生時に搭乗者の負傷状況を予測・把握し、医療スタッフに正確な応急処置情報を提供する人工知能(AI)の開発に乗り出す。

まるで、「負傷レベル予測AI」とも呼ぶべき新たな技術開発への挑戦だが、ヒュンダイは今後、同AIの開発を皮切りにヘルスケア分野への進出を強化する計画だという。

MDGoは、医学博士出身のCEO Itay Bengad氏と、ソフトウェア開発者のCTO Gilad Avrashi氏らが2017年に設立した新進気鋭のスタートアップだ。モビリティにおける外傷情報分析の分野で高い技術を保有しているとされる。

MDGoが開発したAIアルゴリズムは、事故発生時に車両の各種センサーから収集したデータを分析。リアルタイムで乗客の負傷箇所や重症度など外傷情報を生成する。情報は救急車や付近の病院に転送され、治療のための「ゴールデンタイム」(処置を行うべき最適な時間帯)を確保。最適な緊急治療を支援する。

ヒュンダイとMDGoは、2019年4月頃から、車両衝突テストのデータをベースにした「負傷レベル予測AI」の検証作業に着手した。AIが情報を分析するためには、「乗客の位置」「事故当時の車両速度」「衝突部位」「シートベルト装着の有無」などの情報をサーバーにリアルタイムに送らなければならないが、今後それらデータを正確に伝送・分析できるよう、引き続き共同作業を行っていくとしている。MDGoの外傷分析システムを活用すれば、安全な車両設計や最適な安全システムの構築なども可能と見られている。

両社の最終的な目標は、搭乗者の健康情報を確保できる環境として自動車を発展させること、また自動車ー病院間においてシームレスなヘルスケアソリューションを提供することだ。ヒュンダイの戦略技術本部社長チ・ヨンジョ氏も、車両救急サービスの改善でコラボレーションし、将来的に車両内での健康状態の分析など革新的な顧客体験を提供したいとしている。

昨今、日本では高齢ドライバーの操作ミスや運転中の健康状態の悪化により、多くの事故が発生している。実は、ヒュンダイの本拠地であり、高齢化が進む韓国でも同じような社会課題が頻発している。事故後の負傷レベル予測も重要だが、事故を起こす前に車両が搭乗者の健康状態を把握できれば、現在進行形で起きている事故の悲劇を減らすことができるのではないだろうか。

レベル5など、完全自動運転が一般的に浸透・実現するのはまだまだ先の未来の話。負傷レベル予測AI、もしくは健康予測AIの実用化など、現実的な解決策の登場が強く望まれる。

連載 : AI通信「こんなとこにも人工知能」
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文=河鐘基(ハ・ジョンギ)

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