老舗旅館と珈琲の意外なコラボでいまだヒットが続く一の湯珈琲
入社後、商品開発部でヒット商品を連発させた尊也だが、満を持しての社長就任に際し掲げた目標は大きく、「2045年までに200のグループ店舗」だという。たしかに全国規模で格安旅館が競合する中でも一の湯の集客力はいまでも群を抜いているとはいえ、かなりハードルの高い目標といえる。
箱根の中で、今のままおさまっていれば競合は少ないだろう。しかし、旅館だけではなく外資のようにサブブランドなど多様な宿泊施設でグループを構築する展望を描いており、そこにこそ「一の湯ブランド」の確立があると語る。とはいえ、過剰ともいわれている近年の宿泊施設増加傾向にあって、一の湯はどう戦うのだろうか。
「近年の宿泊施設はインバウンドの恩恵を受けています。でもインバウンドは水物。一の湯グループのインバウンド率は約4割でかなり恩恵を受けているものの、今だからこそ日本人ゲストの期待値を上げて応えていくことが基本になると考えています。いまの規模だからできる一の湯の改革です」と、尊也は熱く語る。
バブル崩壊以降、廃業続きで衰退の一途をたどっていたイメージの温泉旅館。その一因として、団体から個人へという旅行態様の変化に対応できなかったことも挙げられる。
老舗旅館に変革をもたらしたのは、個人旅行者にフィーチャーしてきた柔軟な発想と、一見老舗旅館には似つかわしくないチェーンストア理論であった。
連載:ホテルに"人"あり
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