「Brexitの影響です。先週のロンドン出張は参りましたよ」。こぼすのは、パリの国際機関に勤務するスタッフだ。英国のEU離脱となると、物流、金流、人流が大混乱になる。まして「合意なき離脱」ともなったら目も当てられない。
そんな最中に、英仏を結ぶ高速鉄道ユーロスターの税関職員が、3月下旬からストライキを打っているのだ。業務激増を予見して増員や待遇改善を求め、わざと入念かつだらだらと通関検査を行っているという。彼女は「リュックとアタッシェケースのまま5時間立ちっ放しでした。私の列車は何とか再開したが、一本後の仲間は結局運休」。
パリの街中は、相変わらず大勢が行き交い、オペラ座もルーブルもコンコルド広場も健在だ。ニューヨークなど米国の都市が「鉄の街」ならば、パリは「石の街」の観が深い。
凱旋門、シャンゼリゼ、エッフェル塔、それにサクレクール寺院を望む景色はやはり白眉である。だが、路上にはたばこの吸い殻が散乱し、ペットの糞もそこここに鎮座ましましている。うっかりするとニュルっとした「黄金」を踏みかねない。
今回の出張は、欧州大陸主要国の公的資金と成長戦略の状況を調査して、日本の政策にも参照しようという目的であった。フランスの成長戦略にかける意気込みは半端ではない。
サルコジ大統領時代に、「未来のための投資プログラム(PIA)」を開始、オランド政権から現マクロン政権と資金を増額してきた。PIAは長期的な潜在成長力の強化を目指し、その6割をイノベーション創出に、4割を研究費用に充てている。
また、2013年初から推進しているプログラムが「フレンチテック」だ。公私のあらゆる関係者が参画したベンチャー企業支援策である。これはフランス国外ベンチャー・投資家のフランス誘致とフランスベンチャーの海外進出を促進しようというもので、東京にも拠点を持っている。