「100歳になったら政治記者になる」 元祖セルフメイドウーマン黒柳徹子の仕事哲学

黒柳徹子(写真=ヤン・ブース)

玉ねぎ頭に、パンダ愛に、ユニセフ大使──。明るいイメージと軽快なおしゃべりで、老若男女に愛される黒柳徹子。唯一無二な存在感とタレントとしての華やかなキャラクターに目を奪われがちだが、彼女はNHKが放送を開始した日からテレビに出続け、自分にしかできない仕事で結果を出し続けてきた「超一級のビジネスパーソン」にほかならない。

司会を務めるテレビ番組「徹子の部屋」は44年、「世界ふしぎ発見!」は33年、ユニセフ大使は35年。関わった仕事がどれも長く続いているのは、その裏で「自分の思い通りに仕事ができる状況」をつくるため、勉強を重ね、独自のチームづくりを実践してきたからだ。

「面白いと思うことをやってきただけ」と彼女は言うが、まだ女性が自分の力で自由に生きることが難しかった時代から、いくつものボーダーを軽やかに超えてきた黒柳徹子。そんな「元祖セルフメイドウーマン」である彼女がワクワクする瞬間とは?

──たくさんの新しい挑戦をされてきた徹子さん。どんな基準で、自分が取り組むべき仕事を選んできたのでしょうか?

仕事はすべて自分で決めていますが、その基準はとてもシンプル。「面白そう」「やってみたい」と思えるかどうかです。あまり深く考えずに、お芝居なら脚本を2度くらい読んで、「面白そう」と思えばやる。やったことのない初めての仕事でも、ずっと続いているレギュラー番組でも、仕事を始めるときには、毎日まっさらなノートの新しい1ページを開くように新鮮な気持ちで臨んでいます。

「徹子の部屋」はもう44年目に入りました。お越しいただいたゲストの人数はすでに1万1千を超えていますが、まったく飽きることがないですね。これは私の性格なのかもしれない。子どもの時から、どんなことにも「好奇心」が尽きないタイプなの。

工夫をしているとすれば、わざと「慣れないように」意識することでしょうか。毎日は同じようでいて、決してそうではないでしょう? それだけでもう面白い。とにかく、毎日新しいノートを開いて白いページをめくり、何と書き込むか。そんな風に仕事に向き合っています。

──徹子さんが出演されている番組はどれも長く続いているものばかりです。同じスタッフや仲間と長く仕事を続けていくために、徹子さんが実践されていることは?

仕事の可能性を広げたり、同じ人たちと長く一緒にいたり、いつでも自由でいたいと思うなら、一緒に働く人に対して、自分から「好き嫌いをしないこと」ですね。「あの人は意地悪みたい」とか「この人はいい人に違いない」なんて、良くも悪くも他人に期待しすぎないことです。「なるほど、この人はこういう人なのね」と、ただ「ふんふん」と思うだけ。

私は芸能界に入ってから、ケンカやいさかいをしたことは一度もないです。怒鳴ったり怒鳴られたり、誰かと衝突して気まずくなったりするのが、いちばん嫌なことだから。この世界に入ったときに、人と自分を比べることにはキリがなく、意味もないことだと気づいてやめてしまった。そして、トモエ学園に通っているときに、小林宗作先生から「どんな人もみんな一緒だよ」と教わった気持ちをいまでもずっと持ち続けているから、そもそもぶつかりようがないのね。
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構成=松崎美和子 写真=ヤン・ブース イラスト=Luke Waller

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