時代の流れを味方につけ、成長
使い終わった傘は、近くのスポットに返却するだけでいい。料金は1日70円となっているが、使用した日数が6日以上になれば料金の上限が1カ月420円となり、使い放題になる。決済は月末に行われる。
現在(2019年6月時点)、渋谷や上野を筆頭に都内全域と、福岡市での展開を合わせて、スポット数は合計200箇所。登録ユーザー数は2万人を超えている。
こうした傘のシェアリングサービスは今までもなかったわけではない。代表的なものを挙げるなら、2007年には飲食店やショップなどでビニール傘を無料で貸し出すサービス「シブカサ」があったし、直近では2016年3月に函館市で傘の無料貸し出しサービスが実施されていた。
しかし、これまでに実施された傘の貸し出しサービスは「きちんと傘が返ってこない」ことを理由に、途中でクローズしてしまった。「アイカサ」はどうなのか。丸川に聞くと、「返却率は99%ほど」と語る。
「ウーバーやエアビーアンドビーによって“シェアリング”の概念が世の中に浸透していたので、傘のシェアも受け入れてもらいやすかった。うまく時代の流れに乗っかれているのかな、と思います」(丸川)
また今回、JR東日本と提携しているように、スポット数を増やすために大手企業との提携は不可欠になってくる。それに関して、丸山は「先代の起業家たちが道を切り開いてくれたおかげで提携しやすい環境にある」と口にする。例えば、荷物一時預かりシェアリングサービス「ecbo cloak(エクボクローク)」を展開するecboがそうだろう。同社はJR東日本のほか、JR西日本、日本郵便、京成トラベルサービスといった大手企業との提携を次々に実現している。
「創業当時、周りの人たちからは『傘のシェアなんて上手くいくわけがない』と言われてきました。先代の起業家、そして『傘のシェアは面白そうじゃん。やってみなよ』と言って出資してくれた投資家の方々がいてくれたおかげで今があると思っています」(丸川)
2020年に開催される東京オリンピックをひとつのターニングポイントと捉え、今後、Nature Innovation Groupは大手企業との連携に力を入れ、スポット数を拡大していく予定だという。
「これからの半年は駅や駅前など、より利便性の高い場所への設置を推し進めて強固なインフラを構築するとともに、雨の日のプラットフォーマーとして雨天時に下がる経済活動と回遊性を向上させるべく、アイカサの提携店舗とユーザー間の心地よいO2O(Online to Offline)導線の構築を図っていこうと思います」(丸川)