観戦率はわずか1%── パラスポーツをアップデートする「クリエイティブ」の力

(左から) 浅井雅也、成田緑夢、本多達也

1%──

これが何の数字かわかるだろうか。

これは、日本におけるパラスポーツの観戦率である。2017年にニールセンが行った調査によると、日本国民のたった1%しか、パラリンピックスポーツの観戦をしたことがないという。

一方で、ビデオリサーチ社の調査によると2016年リオオリンピックの視聴率はNHKで11.4%、時差がほぼない2008年北京オリンピックのときは17.8%。測定値が異なるため単純比較はできないが、パラスポーツの観戦者のほうが圧倒的に少ないことは容易に想像できる。

2020年東京オリンピックの開催まで約1年。その日が近づくにつれて日々のニュースなどでオリンピック関連の話を耳にすることが増えてきたが、一方で、同時期に行われるパラリンピックの話はほとんど報じられていない。同じように世界の頂点を決める大会にも関わらず、だ。

2019年5月27日〜30日、東京ミッドタウンにて行われた「Advertising Week Asia」にて、「ディスラプト インクルーシブスポーツ」と題したパネルディスカッションが行われた。

登壇者は3名。パラ卓球台のプロモーションにも関わるTBWA HAKUHODOクリエイティブディレクターの浅井雅也、髪の毛で音を感じるデバイス「Ontenna(オンテナ)」を開発し、パラ卓球と組んで新しいスポーツ観戦体験を模索している富士通の本多達也、そして、平昌パラリンピック男子スノーボード金メダリストの成田緑夢だ。

観戦者がたった1%である障がい者スポーツを今後どのように広めていくのか、オリンピックと比べて認知度が低いパラスポーツをどうやって世の中に広めていくかをテーマに議論が交わされた。

浅井雅也(以下、浅井):私はチームを組み、いまパラ卓球のプロモーションの一環として、「パラ卓球選手の個性を表現した卓球台」を制作し、展示などを行っています。例えば、車椅子の選手ならネット際のボールが取りづらいから奥行きが広く感じたり、左足に障がいを持っている選手は踏ん張りが効かないから左側のコートが広く感じたりなど、選手たちが持つ障がいを卓球台に表現したものです。本多さんとは、パラ卓球のコラボでご一緒させていただきました。


障がい者の個性を表現した卓球台
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文=石原龍太郎

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