「詐欺会社」セラノスが目指した血液検査、イスラエル企業が実用化

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米国のセラノスという会社を覚えているだろうか?たった1滴の血液で200種類以上の血液検査ができるとうたい、大きな注目を集めたスタートアップだ。

スタンフォード大学を中退したエリザベス・ホームズが設立した同社は、およそ9億ドル(約977億円)を調達。最高経営責任者(CEO)だった彼女の資産は一時、推定45億ドルとされた。だが、セラノスは「約束」を守ることなく昨年9月に解散。ホームズは共謀罪と詐欺罪で起訴されている。

一方、腕の静脈から小瓶に入れるほどの量を採血しなくても、血液検査ができるというのは本当だった。イスラエルのサイト・ダイアグノスティクス(Sight Diagnostics)は、2滴の血液で血液中の赤血球数と白血球数、血小板数などを調べる血球算定(CBC)検査を行うことができる検査機「Olo」を開発した。

昨年12月に新たに2800万ドルを調達した同社は、すでに欧州その他の地域でこの検査機を販売しており、米食品医薬品局(FDA)からも承認を得られると見込んでいる。

CBCの市場は世界全体でおよそ500億ドル規模。この市場をターゲットとする同社によれば、世界では年間40億回のCBC検査が行われており、1回当たりの料金は通常10~20ドルだ。

セラノスとの明らかな相違点

小型で卓上型の「Olo」は、患者の指先から採取した血液を、特定のアルゴリズムを用いたコンピュータビジョンによって調べるというものだ。異なる血液成分の数量を算定し、結果は10分で得られる。米クエスト・ダイアグノスティクスなどが提供してきた従来の血液検査の方法では、採血から結果が出るまでにはおよそ4日かかる。

サイト・ダイアグノスティクスの共同創業者の1人、ヨシ・ポラックCEOはコンピュータビジョンの専門家だ。先進運転支援システムの世界的リーダーとして知られ、米インテルが150億ドルで買収したモービルアイの出身だ。

もう1人の創業者であるダニエル・レブナーは、診断に人工知能(AI)とデータサイエンスを取り入れることを目指してきた。ハーバード大学ヴィース生物工学研究所の元研究主幹で、スタンフォード大学で電気工学の博士号を取得している。

最高商務責任者(CCO)によれば、同社はこれまでに、マラリア検査キット数百万個を販売。また、査読システムを採用しているジャーナル3誌で研究結果を発表している(セラノスは、どちらも実現していない)。

同社のCBC検査装置は、欧州連合の全加盟国の基準を満たしていることを示す「CEマーク」を取得しており、欧州での販売が認められている。また、アフリカやアジアでも販売許可を得ている。米国内の3州でも臨床試験を終了しており、結果をFDAに提出済みだという。

サイト・ダイアグノスティクスは、セラノスとは正反対の企業だ。正確な血液検査の結果を迅速に割り出すことの責任を真剣に受け止めている、真の科学者たちによって運営されている。

編集=木内涼子

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