タレンド(Talend)社のスティッチ(Stitch)部門で上級副社長(SVP)を務めるジェイク・スタインは「グーグルにとって、とてもスマートな取引だ」と語る。「これは、マルチクラウドの未来を受け入れるテクノロジーの価値を示し、証明するものだ」
ルッカーの創業者らは2011年、一つの大きな問題の解決に乗り出した。当時の企業は、ビジネスアプリ、ソーシャルネットワーク、モノのインターネット(IoT)などから得た莫大な量のデータを蓄積する作業を進めており、そこからリアルタイムで知見を得る方法の改善に対するニーズがあった。こうした企業の多くは、肥大化したITシステムのせいで身動きが取れなくなっていた。結果として、つぎはぎだらけの脆弱なシステムができあがり、機能しなくなることも多かった。
そこでルッカーは、次世代のBI(ビジネスインテリジェンス)プラットフォームを構築した。その中枢となったのが、ベンダーのデータストアへデータを渡すことなくデータウェアハウス(アマゾン・ドット・コムのRedShift、Snowflake、グーグルのBigQuery、マイクロソフトのSQLなど)とリンクできる機能だ。さらにルッカーは「LookML」という独自言語を開発したため、複雑なSQLのステートメントを覚える必要がない。こうした差別化のおかげで、ルッカーは多くの支持を得られたのだ(現在の顧客数は1700以上に上る)。
買収の効果
ルッカーとグーグルの間には、強力な相乗効果がある。どちらもクラウドをベースとしたオペレーターであり、WPP、ハースト(Hearst)、バズフィード(BuzzFeed)など約350の共通した顧客を持つ。将来的に見ると、このプラットフォームには大きな進化の可能性がある。例えばグーグルは、これに統合できるような人工知能(AI)や機械学習の技術を持ち合わせている。
トライファクタのアダム・ウィルソン最高経営責任者(CEO)は「分析作業のクラウドへの移行のペースと規模は弱まりを見せていない。グーグル・クラウドによるルッカー買収の規模は、こうした市場動向を示す良い例だ」と言う。「クラウドコンピューティング黎明期は、クラウド上にアプリケーションを構築し運用する開発者によってけん引されていたが、今のクラウド分野での成長機会は分析、機械学習、AIに重点が置かれている」