ビジネス

2019.06.27

社員100人にインタビューを実施 RIZAP「デジタル改革」の舞台裏に迫る

RIZAPグループ 執行役員の岡田 章二


改革のための100人インタビュー

石黒:なるほど、全社的で大きな森の部分を岡田さんがまず定義していらっしゃるということですね。その作業は、トップダウンではできないと思いますが、何をなさいましたか?

岡田:私が一昨年の11月に入社して最初にやったのは、実態を理解するために部長から契約社員まで100人に対し、1対1でインタビューをしました。その中で聞いたのは「あなたの仕事は何ですか?」「あなたの仕事で困っていることは何ですか?」「僕でお役に立てることは何かありますか?」という3つだけです。これらの質問だけでも、たくさんの課題が見えてきたので、それをつなげてみたり、整理して、優先順位をつけてひとつずつプロジェクトにしました。

それから改革の組織を作るためのビジョンを作り、「システム部門も経営数値に責任を持ちましょう」「ITは手段であってひとつの専門性でしかない」「システムという限定された領域だけではなく、ビジネス自体に関与していくことが重要であり、それが新しいタイプの自己実現だと思っている」「自己成長のためにルールや既成概念は取り払いましょう」といったメッセージを投げかけていきました。

石黒:100人インタビューはすごいですね。こういうことで共感を呼びますし、みなさん嬉しいでしょうね。

岡田:社内で方針を発表した際は、「問題や方向性だけでなく具体論もあって、具体的に進んで行くイメージが理解できた」と、みんなが言ってくれて。それから社内の目線が変わりましたね。瀬戸さんも僕が入ってくる前に「今度すごい人が入ってくるから」ってハードルを上げてくれていたので、助かりました(笑)

石黒:それは大きな後押しになりますよね。社長が信頼している人なんだからっていう。100人インタビューが終わったあとは、どんな取り組みをされたのでしょうか。

岡田:まずはITインフラの問題が点在していたので、一新しました。クラウド化も当然やりましたし、デバイスも全部変えました。それに事業ごとにネットワークやセンターがバラバラだったので、全部まとめてコストを下げたり、セキュリティの強化もしました。最初にちゃんとした基盤を作らないと、他のアプリケーションがまともに動かないし、アプリケーションを先に作ってしまってから基盤を変えると全部やり直さなくちゃいけなくなるので。

石黒:すごく正しいアプローチですね。しかし、これができない会社さんが多いのです。すごい! 

岡田:瀬戸さんの理解もありましたし、不便をかんじていた社員も多かったので、やりやすかったです。アプリケーションレイヤーでは、RIZAPのカウンセリングで使う「ボディナビゲーター」という体重や体脂肪率のシミュレーションツールを開発して、“RIZAPのデータに基づくと、どれくらいのスピードで痩せていくか”という成果のイメージをお客様にお伝えすることで、契約率が向上しました。加えて以前は、予約はコールセンターで受けていたので、それだと電話をかける時間がなかなかとれないお客様は、担当のトレーナーの予約が取りづらかったし、都合が悪くなったときは、また電話でキャンセルするしか方法がなかったんです。



それをスマホアプリからオンライン予約ができるようにしたことで、キャンセルではなく空き時間を見て別の日時で予約を変更してもらえるようになりました。普通のジムは、契約が月単位になっているので、むしろ、契約したお客様が来ないほうが良いとも言えるのですが、うちは来店していただいて1回50分のセッションを受けていただいたタイミングで売上を計上しているので、来てもらわないことには商売にならないんですよ。

あとはスマホのチャット機能を使った接客を始めたことで、チャット経由のカウンセリング予約も取れるようになりました。昼間はなかなか電話がかけられない忙しい方が、夜中の3時に相談頂いて申し込んでくださるんですね。他にもCRM(顧客関係管理)システムの導入を始めたり、法人向けの取り組みを始めたり、店舗向けにeラーニングを導入したり、店舗WI-FIを再構築したり…と、ITとデジタルを使ったいろいろな施策をやってきました。
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文=石黒 不二代

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