「いつか現地を訪れることを願って」 難民を友人のように受け入れるNPO法人代表のファッション哲学 #UNDER30STYLE

WELgee代表 渡部清花


━渡部さんのファッションに対する思いは、WELgeeでどのような影響を与えていますか?

いつか異国の土地へ足を運ぶ励みになっています。難民の方と接してわかるのは、ファッションでその土地やその人のことがわかるということ。

彼らの愛する母国のほとんどは、現在日本からの渡航が難しい状況にあります。複数の地域で避難勧告が出されているコンゴ民主共和国の男性を受け入れた時、彼のスーツケースには何故かレゲエのバンダナやTシャツなど、カラフルなアイテムがたくさん詰まっていました。

逃れざるを得ない状況に追い込まれた人が、たくさんの荷物を持っていると国を出るのではないかと疑われて目をつけられてしまう可能性が高くなる。だから、できるだけ荷物を小さくしなければならないのに、何故必需品でないものを持って来たのだろうと疑問に思いました。

尋ねてみると、そこに入っていたのは、彼が現地でコーラス団を結成して民主主義と平和のための社会運動を率いて、数々の村で歌って踊っていた時の衣装でした。

独裁政権の下、市民が平和と安心を感じられない環境で育った彼は、政府への要望や不当な逮捕を廃止するべきだというメッセージを歌にして訴えていたんです。文字の読めない村人も多く暮らす地域だったから、歌だったんですね。

彼が率いていた団体は徐々に大きくなり、やがては政府から迫害を受ける程にもなってしまいました。

彼のスーツケースには逃亡に必要なものは入っていませんでしたが、彼が切望していた未来そのものが入っていたんです。

コンゴだけでなく、中東から来た人たちも紛争のせいで愛する故郷に帰国できずに悲しんでいます。「生まれ育った自分の村が恋しい。ジェス(渡部)も平和になったら遊びに来てね。すごくいいところだから」とみんなが私に言ってくれるんです。

その度に、彼らの母国をいつか訪れたいという思いが強くなります。時間はかかれど、彼ら1人ひとりの才能が発揮される未来を目指して活動を続けたいと思っています。


今後3年で成し遂げたいことは?



大学時代、渡部がNGOの駐在員・国連開発計画の現地スタッフとして2年間を過ごしたバングラデシュのランガマティは見渡す限りの森林だった。そこで見ていた緑を思い浮かべながら、「自分が将来生む子にとっての、そして血の繋がりのない子にとっても懐の深いお母さんになる」という夢を教えてくれた。


渡部清花◎1991年、静岡県生まれ。東京大学大学院・総合文化研究科・人間の安全保障プログラム修士課程。大学時代はバングラデシュの紛争地にてNGOの駐在員・国連開発計画(UNDP)インターン。内閣府世界青年の船事業第24回代表青年。トビタテ!留学JAPAN1期生。3年半前に設立したNPO法人WELgee(WELCOME+refugee)では、経験・技能・意欲を活かした難民の就労事業や、空き家活用型シェアハウスに取り組む。自身も難民の友人たちと暮らす。

構成=裵麗善(ぺ・リョソン)写真=藤井さおり

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