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2019.06.20 07:00

高速PDCAで実現する、セブン&アイの「察するデジタル戦略」とは?

(左から)ネットイヤーグループ 石黒不二代、セブン&アイ・ホールディングス 清水 健、ネットイヤーグループ 須川敦史

(左から)ネットイヤーグループ 石黒不二代、セブン&アイ・ホールディングス 清水 健、ネットイヤーグループ 須川敦史

ネットイヤーグループの石黒不二代が、企業のデジタルトランスフォーメーションを牽引されている方々を訪ねる本企画。今回は、セブン&アイ・ホールディングス 執行役員の清水 健氏に、お話を伺いました。


清水さんの大胆とも言えるキャリア

石黒:まずはユニークな清水さんのご経歴を、詳しく教えていただけますか?

清水:92年に大学を卒業して、日本銀行に入りました。本店の営業局で銀行や証券会社の窓口をやったり、仙台支店で産業調査をやったり、労働組合の執行委員もやりました。その後、日銀法が改正されたのを契機に国会担当になり、3年半ほど参議院の中に常駐しながら、国会議員対応や総裁のアテンドをしていました。それから為替課に移って為替の介入を担当した後、東急エージェンシーに転職したんです。

石黒
:日銀から代理店への転職はあまりに大胆だと思うのですが、なぜ東急エージェンシーに行かれようと思ったんですか?

清水:転職経験のある人と多く触れ合う機会があり、「一度は違うところを見ておいたほうがいい」と盛んに勧められて。いくつか内定を頂きましたが、どうせなら真逆の方向に振り切ったほうが良いのではないかと思い、東急エージェンシーに決めたんです。結局、7カ月くらいで辞めたんですけどね。その次に転職したのが、今のセブン銀行(旧アイワイバンク銀行)でした。セブン銀行では、最初の1カ月がセブンイレブンの店舗研修があるので、2002年は日本銀行からセブンイレブンの店員まで、かなり激動の1年だったんです。

石黒:それは本当に激動でしたね。

清水:セブン銀行では、提携の金融機関を開拓する営業を担当した後、企画部門に移り、セブン銀行の上場やアメリカのATM会社の買収を手がけました。それから2013年にセブン&アイ・ホールディングスに出向となり、2014年の初めから「オムニ7」の担当になって、今に至ります。

セブン&アイHDの考えるデジタル戦略とは?


石黒
:セブンさんの考えるデジタル戦略の概要を教えていただけますか?

清水:これまでセブン&アイにはデータはたくさんあるのに、データ戦略がありませんでした。それはなぜかといえば、データ戦略を打ち立てて、データを活用していくためのベースがなかったからです。いろいろな情報がバラバラになっていて、全体として見ることもできなければ、目の前にいるお客様が誰かということもわからなかったんですね。だから店員が顔見知りでなければ「昨日もありがとうございます」の一言さえ、言えなかった。

そこで、まずはグループ内で活かしきれていないデータをまとめて、どう活かすかを考えようと。加えて、我々が見えないところのデータを外から持ってきて、我々のデータとまとめて分析することで、お客様とのコミュニケーションに活かしていこうというのが、我々のデータ戦略の概要です。

石黒
:清水さんとしては、どんなデータがセブンさんの強みであり、そのデータがどんな形でつながると、お客様とのコミュニケーションに活かしていけるとお考えですか?

清水:やはりデータとして強いのは、日々のお買い物のデータだと思います。“さっきホットコーヒーを買った”、“夜は晩御飯にこれを買った”といったお客様のリアルな生活を示すデータが取れる企業は、なかなかありません。うちはスーパーやコンビニという1日に何度も接点がある場所を持っていて、そこで何を買っているかがすべてわかるというのは、非常に強みだと思っています。

石黒:確かに、どの企業においても購買データが最も重要なデータになりえますが、商品やサービスの購買サイクルが長いとデータの価値が低くなります。その点、毎日、購買してくれる商品を持つセブンさんは、そのデータを取得し利用することに意味がありますね。
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文=石黒不二代

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