アジャイル&スクラム方式で作品を生み出す
デジタル・トランスフォーメーション、AI/ロボットとの共存、働き方や生き方の多様化…… 社会全体の変化が激しい時代には、過去の成功事例や誰かが作ってくれた手順書だけでは対応できず、自ら状況に合わせて判断し、行動することが求められる。
しかし、いままで誰かの指示を待って行動していた人にとって、急に「自分で考えて行動せよ」と言われても、実践するのは難しい。前述のフランス企業の人事部もそのような状況に課題を持っており、解決方法として採用したのが「Art Thinking Improbable Workshop」なのだ。
このワークショップのアプローチは、エンジニアの開発手法のウォーターフォール型とアジャイル型の違いにも近い。トップダウンの指示を待つよりも、アジャイル型にこまめに動き・検証し、実行していくことがエンジニアリングの世界を飛び出て、実世界でも必要になってきている。
「Art Thinking Improbable Workshop」はアジャイル型開発の、スクラム開発に起点がある。3日間のワークショップはチーム戦で行い、なんどもイテレーションを行いながら最終日のアウトプットを目指す。
この3日間の詳しいプロセスは同連載の次回記事で紹介するとして、ここからは過去に開催した3日間のワークショップで、どのようなアウトプットが生み出されたのか、その作品事例を紹介する。参加者は全員ビジネスパーソンか学生である。(過去の作品事例はInstagramの「Art Thinking Collective」に随時アップされているのでそちらを確認いただきたい)
葬儀4.5 The funeral of 4.5 (2015) フランス
ソーシャル上のスコアが刻まれた墓石
デジタル化が進み、ソーシャル・レーティングが当たり前になった時代において、墓石に刻まれるものは生前のソーシャル活動のスコアではないか。インターネット上の行動すべてが自分自身の評価につながる現在の社会に対する批判的な作品。
デス・ボックスDeath Box (2015) フランス
フランス「Orange」の社員が生み出した作品
「Orange」にはもともと「Live Box」というプロダクトがある。Live Boxとは、家庭内のWi-Fiやケーブルテレビなどの家庭内のインターネット接続を容易にするもの。ただ、IoTが急速に進んだこれからの時代では、家庭内では人びとの健康状況も取得できるようになり、死期も計測できるようになる可能性がある。