私は学生時代に起業し、その会社のまま23年の間、生き抜くことができました。会社の成長と共に社内に符丁のようなものだったり、文化のようなものだったりが生まれるのをとても嬉しく頼もしく感じることがあります。ファンコミュニティを運営する仕事では、100以上の構築に携わる機会を頂きました。化粧品ブランド、飲料や食品、日用品メーカーなど様々な企業のファンコミュニティが誕生し、成長する、その姿は、それぞれに個性的でどれもドラマチックです。同じシステムとメソッドを使っても、どれひとつとして同じ場にはなりません。相互につながるネットワークから浮き彫りになる企業のアイデンティティ。そのネットワークに、否応なく映し出されるのは、企業の個性なのだと思うようになりました。
下の図は、実際のファンコミュニティ内の“絆”をデータサイエンスの技術を用いて可視化したものです。点がエンドユーザーを、点と点を結ぶ線が双方向のやりとりがあったことを表しています。
私は、この発見と感動を多くの人に伝えたいという願いから、時代を超えて受け継がれる企業の歴史を伝えるラジオ番組「企業の遺伝子」のパーソナリティを務めさせていただいています。現在までに80社の遺伝子を採取するなかで、いつしか私は「社史ヲタ」に…。もうひとつのコラム「企業の遺伝子」では、番組で放送された遺伝子の中から選りすぐりの個性を紹介していきます。文章の編集は、あの松岡正剛さんが所長を務める編集工学研究所が手がけてくださいます(編集技術の妙にもご注目ください)。激動の時代、激戦の市場を生き抜いてきた企業の遺伝子たちは、それぞれに今を生きるヒントとエールを私たちに伝えてくれています。
"絆"という字は、「断つことのできない人と人との結びつき」という意味を持ち、平安中期頃より使用例が見られる古くからの言葉のようです。私たちの会社では、「量」だけでなく「質」を重視した関係を表す言葉と考え、双方向に“絆”が張り巡らされたコミュニティを英語で「Quality of Network(QON)」と表現しています。