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2019.06.10

【独白】長友佑都「僕が起業家の人生を歩もうと思ったワケ」

トルコでインタビューに答えた長友佑都 (c) Shinji Minegishi


サッカー選手だけの時間は短い。それならば……

起業の考えも、決して突発的に思いついたわけではなくて。たしか、プロサッカー選手になって3年目ぐらいだったと思います。当時、所属していた事務所から独立し、「オフィス長友」を設立しました。

僕はすごく好奇心旺盛で、なおかつ成長に対して貪欲です。当時、サッカー選手としても貪欲に成長を求めていましたが、サッカー選手だけの時間は短いとも同時に思っていました。そのため、少しでも試練や苦難がある道を選びたいと思い、自分で自分を管理することにしたんです。

そして、次に設立したのが「INSIEME」です。この会社はサッカースクール『Yuto Nagatomo Football Academy(横浜市緑区中山町)』をやっています。サッカー選手として、僕は幸運にも素晴らしい経験をさせてもらっています。同時に、その経験を若い世代に伝え、今から日本のサッカーがもっと強く、もっと成長するために還元していかなければいけないと思っています。だからこそ僕は、「世界に通用する選手を育成する」というビジョンを持って、世界で活躍するために必要な能力を独自のトレーニングで育成するプログラムを仲間と開始しました。

3社目に設立したの「Cuore」です。この会社は「みんなの原動力になる」という思いを持って、2016年4月頃からスタートしました。この会社の構想を考え始めたのは、ブラジルW杯が終わった2014年〜2015年ぐらいです。

僕の高校時代の友人である中村洋太といろんな話をする中で、自分がこれまで培ってきた経験やノウハウ、強みがこれからの社会の健康問題に貢献できるのではないか。そんなアイデアが浮かび、これは面白そうなチャレンジになると思い、スタートしました。

起業という事柄だけで振り返ると、ずいぶん前から考えていたことになりますが、それは、ひとりの人間としての人生の過程が濃く、深いほど、人生はもっと豊かになり、成長させてもらえると常に思っていたからだと思います。

もちろん失敗もたくさんありますし、難しいこともたくさんありますが、それをひとつずつ乗り越えた先に“成長した自分”がいると思うと、行動せずにはいられないんです。


(c) Shinji Minegishi

戦場に立ち続けると研ぎ澄まされ、洗練されていく

起業家として挑戦していく過程において、周りの人たちから良い刺激を受けています。同年代の圭佑が挑戦する姿には刺激を受けましたし、彼以外にも、いろんな企業の社長ともお会いする機会があるのですが、みんなすごくキラキラしている。

そのキラキラしている姿や纏っているオーラは、日々悩み、そして自問自答しながら、責任やプレッシャーと闘っている証しだと思っています。そのオーラは戦場に立っている人しか出せない。動物に例えるならば、サバンナの荒野にいる動物と、動物園にいる動物にはオーラや体の中から湧き出てくる「圧」が違う。

研ぎ澄まされ具合が違うので、顔も体も洗練されていると。それは厳しい環境で戦い抜くから研ぎ澄まされていくんだと思います。だから、同世代の圭佑もそうだし、各界で活躍する経営者からは常に刺激をもらっています。

アスリートがアスリートを終えた後を表現するという意味において、“セカンドキャリア”はわかりやすい言葉だと思います。でも、僕はファーストもセカンドも考えていません。

長友佑都のストーリーは生きている限り続くわけで、今もずっと続いています。これは僕が人生というストーリーの中で、どれだけ成長できるのか、求められるのか、信頼されるのか、を説いています。

サッカー選手ではなく、「ひとりの人間として何ができるのか?」という問いに対して、答えを出し続けているので、僕が志を持って起業をしていることは、引退後のキャリアを考えているけど別に「セカンド」という感覚ではありません。その感覚を持っているからこそ、サッカー選手を終えた後の人生もすごく楽しみなんです。

構成=新國翔大

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