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2019.06.09 10:00

土壌中の有用バクテリアで「ストレス予防ワクチン」も可能に?

Pinkyone / shutterstock.com

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私たち人類よりずっと先に誕生していて、ずっと長く生き残るであろうバクテリア。科学者たちは、そうしたバクテリアの秘めたる不思議を次々に発見している。

2019年5月に専門誌「Psychopharmacology(精神薬理学)」で発表された研究で、土壌中のバクテリアに隠されていた大きな秘密が明らかになった。かなり前から理論が構築されていた、ストレスへの耐性を高める「ストレス・ワクチン」が開発される日が近づいたかもしれない発見だ。

コロラド大学ボールダー校の統合生理学教授クリストファー・ローリー(Christopher Lowry)率いる研究チームが2018年に発表した研究で、土壌中に生息するバクテリア「マイコバクテリウム・バッカエ」(Mycobacterium vaccae、以降Mバッカエ)によって、マウスのストレス反応が低下したことが明らかにされていた。

研究では、はじめにマウスにMバッカエを注射。それからマウスを、ストレスがかかる状況に置いた。すると、Mバッカエが注射されたマウスでは、短期的には「心的外傷後ストレス障害(PTSD)のような症候群」が予防されたほか、その後はストレス反応も軽減されていた。

この研究をきっかけに、Mバッカエは哺乳類の闘争・逃走反応を弱める化合物を宿すとする仮説が立てられた。しかし、Mバッカエがそうした働きを持つ理由や仕組みについては謎のままだった。

ローリー率いる研究チームは2019年、新たに執筆した研究論文において、その働きを生む原因と思われる、バクテリアに含まれる脂質を発見・特定したと発表した。そしてさらに踏み込んで、免疫細胞との相互作用の仕組みを解明するため、その脂質を化学合成することにも成功した。

ローリーは、「効果があることはわかっていたが、その理由が謎だった」と述べた。「今回の新しい論文はその解明に役立つ」

論文によると、この脂質は、免疫細胞内で受容体と結合し、炎症を引き起こす特定の化学物を締め出すのだという。研究者たちは、細胞に脂質で「前処理」を施してから、炎症反応を起こすための刺激を与えた。すると、細胞がその作用に抵抗性を示したことがわかった。要するに、細胞が炎症の発生を効果的に予防したわけだ。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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