ビジネス

2019.06.15

増えるZ世代の起業家 イノベーションの鍵はロボット教育

「Robotex International Conference」では子どもたちがロボットを通じてテクノロジーの真価に触れる。


「ひとり親の家庭で育ってくる中で、真面目に働かなくてはいけない、エリートでなくてはいけない、いい大学に入らなくてはいけないと、いつもどこかで考えていたような気がします」という齋藤氏は、就職活動も早めに終えることができ、内定も貰っていましたが、本当に自分がやりたいことは何なんだろうと思うようになり、就職活動に区切りをつけてエストニアに留学。

「現地でのインターンシップやコミュニティ活動を通して“自分”が見つかることを期待していましたが、たくさんの人と出会い、世界が広がれば広がるほど、結局自分が本当にやりたいことって何だろう? と、よく分からなくなっていきました」

周囲が血眼で就職活動に励む中、自分を見つめ直すために海外留学する。挑戦的な決断をした齋藤氏を当時取材したメディア記事には大きな反響があり、ポジティブだけでなくネガティブな意見も多く届きます。初めて勇気を出して“当たり前”のレールを外れたことで、日本の挑戦に対する価値観に気がついたと齋藤氏は言います。


フェスティバル内のエキスポ会場では、大人も子どもも分け隔てなくテクノロジー体験を共有している。

「ロボテックスでは、誰もが平等に挑戦でき、それを応援する土壌を創るための産学官連携型エコシステムを形成しています。“当たり前”を乗り越え、新たな価値を共創する環境が育まれていることに魅力を感じました。日本でも安心して失敗できる環境を作ることで、もっと多くの人が自分の“好き”に向かって、思う存分走れるようにしたい。“好き”を突き抜けさせて、イノベーションを生み出す手助けがしたい。さらに、ロボテックスの活動を通して、自分自身の“好き”も見つけていけたらと思い、迷うことなく飛び込みました」

教育でイノベーションを加速するための条件

世界の起業家教育促進の流れを受け、日本においても、国際競争力ある人材の育成を目指し、政府主導でEdTechやSTEAM学習コンテンツ等の創出が急ピッチで進められています。2020年には小学校のプログラミング教育必修化が予定されており、子どもたちの思考力に大きな影響を及ぼすでしょう。

ロボテックスはその活動の軸に教育を据えていますが、教育から確実にイノベーションを生み出すためには、いくつかの条件があると齋藤氏は言います。

「学校教育からイノベーションを創出するためのキーワードは、サイドアクティビティとオフラインの2つでしょう。公教育のカリキュラム内ではイノベーションは生まれづらいのが現実です。全体のボトムアップを目的としたカリキュラムの中では個別最適学習は難しいですし、公教育にそれまで求められてきたものではありません。また、カリキュラムで画一的に能力を伸ばした子どもたちは、決められた枠組みの中だけで考えるようになってしまいます。好き! やりたい! と枠組みから飛び抜けている部分こそがイノベーションに繋がります。

もちろん、学校教育でベースとなる6角形型のスキルセットを体得しておくことは重要です。2020年から始まるプログラミング学習のように、次の世代に必要なテクノロジー教育を誰もが学べるように環境整備することも、これから教育現場に求められることなのではないかなと思います。

ただ、そこからイノベーションに発展させるためには、子どもたちが主体的に学べる機会を学校外のさまざまなセクターで用意し、気兼ねなく各分野のプロフェッショナルにアクセスでき、個別具体の興味を引き出し伸ばす仕組みを作って、皆で応援し支え合うことが大切です」
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文=佐藤祥子

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