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2019.06.07 11:00

イングリッシュ・スパークリングワインの実力と優位性を探る

わずか10年の間で、高い国内需要を背景に生産数が急増している英国産ワイン。世界の数々の品評会でも高評価を博している。そのなかでも特にイングリッシュ・スパークリングワインが注目を集めているという。英国の老舗ワイン商に勤務する堀野晃弘氏に話を聞いた。


ロンドンが、チューリッヒやボローニャ、パリと並ぶヨーロッパを代表するグルメ都市に変貌を遂げているのをご存じだろうか。年々進化を続ける英国料理と並行し、いま、世界中の美食家たちの舌を唸らせているのが、自国産のワインだ。
 
実は、英国は2012年から持続可能な社会の実現に向けて、さまざまなキャンペーンを行い、世界に発信している。そのひとつ、「Food is GREAT*」の主軸として、英国政府は自国産ワインを最も重要なアイテムのひとつに位置付けており、事実、カジュアルなスタイルで料理とワインを楽しむレストランがここ数年、増加の一途をたどっている。

そもそも英国は日照時間が短く、寒冷な気候も重なって、良質なワインを醸成するには不向きだといわれていた。それがなぜ、脚光を浴びるようになったのだろうか。英国の老舗ワイン商「ベリー・ブラザーズ&ラッド(BB&R)」の日本支店に勤務する堀野晃弘氏はこう答える。


堀野晃弘◎ベリー・ブラザーズ&ラッド日本支店ホールセール・アシスタント・マネージャー。BtoB部門のワインセレクトを担当。クラシックからナチュラルなスタイルのワインまで、世界中のファインワインを幅広く扱う。

英国産ワインがおいしくなった3つの理由

「WineGB(Wines of Great Britain)によれば、1975年の時点では英国のブドウの栽培面積は僅か195ヘクタールでした。それが2016年になると、実に10倍以上の2,077ヘクタールに伸びているのです。これには大きく分けて3つの要因があるといわれています。まずひとつめは、気候条件です。温暖化の影響により、イングランド南東部が、温暖化前のフランスのシャンパーニュ地方と似た気候条件になっているのです。ふたつめは、土壌です。イングランド南東部は、石灰質の土壌が多いという特徴があります。フランスのシャンパーニュやブルゴーニュ、イタリアのバローロなどに代表されるように、多くの高級ワインは石灰質の土壌で造られています。温暖化によって、気候条件と土壌の質が変化し、精良なワインをつくる環境が整ったと言えるでしょう。3つめは国民性が挙げられると思います。ワインをどこの国の人々よりも愛してきた文化があるし、モノづくりに対して非常に強いこだわりをもっている。品質を高めるために、口当たりがよく、濃厚なブドウを育てる栽培に徹底的に力を注いだのでしょう。実際、シャンパーニュも含めたブラインドテイスティングにおいて、英国産ワイン、そのなかでも特にイングリッシュ・スパークリングワインがより高い評価を受けているケースが増えています。高品質でありながら、シャンパーニュより手頃な価格で手に入るので、自然と注目が集まったのだと思います」

味わいの特徴と、今後の展望

そのイングリッシュ・スパークリングワインは、他国産と比較して、味わいに独特な個性を見出せるという。

「まずはキレのある酸が挙げられるでしょう。石灰が豊富な土壌、温暖化が進んだとはいえブドウの生育には涼しい気候、海のそばの産地ならではの風通しのよさなど、諸条件が相まって、味わいに心地よい冷涼感と独特な爽快感を与えています。涼しい気候は温暖な地域に比べてブドウの生育期間が長く取れる分、完熟したブドウの旨みがきちんと伝わるので、豊かさや深みを感じることができるのです」
 
環境・食糧・農村地域省(Defra)の発表によると、18年の英国産ワインの生産数は1,560万本。世界への輸出占有率はまだ8%だが、その割合は、今後増加すると予想している。同年の英国産のブドウ生産量は天候に恵まれたことも重なって、前年の2.6倍になっているという。テタンジェやポメリーといった大手のシャンパーニュメゾンもイギリスに畑を購入し、資本を投入し始めている。

「弊社のワイン・ディレクター、マーク・パードーMW(Master of Wine)は、ニュージーランドにおけるソーヴィニヨン・ブランと同等以上の成功を収めると予想しています。日本でも今後、英国産ワイン熱は加速するでしょう」
 
最後に今回特別にガズボーンのイングリッシュ・スパークリングワイン「ブラン・ドゥ・ブラン 2013」に合わせた料理をご提案いただいた「クラフタル」の大土橋真也シェフに、このワインの実力とマリアージュのポイントを伺った。

「フランス料理やイノベーティブ・フュージョンというジャンルにおいても、さまざまな料理に合わせることができるワインです。口に含んだ瞬間から食べ終えたあとの余韻にいたる時間のなかで、どれだけこのワインと波長のようなものが重なってくれるか、そうしたことを考えて、今回はホワイトアスパラのエチュベと十勝ハーブ牛のミノのグリルをご用意しました」

ワイン単体の魅力はもちろんだが、こうした既存の枠にとらわれない、新たな提案をしてくれる場所で楽しめることも、英国産ワインには大切なのかもしれない。


ハンブルドン(左)クラシック・キュヴェ。商業的ワイナリーとしては英国最古の1952年創業。2015年、英国のワイン誌『ノーブル・ロット』主催のシャンパーニュと英国泡のブラインド試飲会でトップの評価を得て注目を集めた。ガズボーン(中)ブラン・ドゥ・ブラン 2013、(右)ブリュット・リザーヴ 2009 LD。2004年という比較的最近の創業ながら、英国王室やブリティッシュ・エアウェイズのファーストクラスで供される名実ともに英国トップのワイナリー。

英国産ワインの詳細はこちら



今回、大土橋シェフが用意してくれた料理は、世界3大ブルーチーズにも数えられる英国産のスティルトン(写真左)を使用している。他にも、鮮やかなオレンジが印象的なシュロップシャー・ブルー(写真右)や、元々は英国が発祥でいまでは世界中でつくられているセミハードのチェダーチーズ(写真奥)など、英国では古くからワインとともにチーズがあった。これらのチーズは日本でも人気で、チーズ専門店で一般的に取り扱われている。



恵比寿のジョエル・ロブションやパリのサチュルヌなどで研鑽を積んだ大土橋真也シェフがつくるフレンチとイノベーティブ・フュージョンは、一本のイングリッシュ・スパークリングワインでフルコースを堪能することもできる。ワインリストには常時英国産ワインが並び、銘柄によってはグラスでも提供している。



CRAFTALE(クラフタル)
住所/ 東京都目黒区青葉台 1-16-11 2F 
tel / 03-6277-5813 
営業時間/ランチ11:30〜 15:00 ※土・日曜のみ ディナー 18:00〜23:00 定休日/火・水


*「Food is GREAT」キャンペーン

英国のフード&ドリンクに焦点を当て、2012 年から英国政府が展開しているグローバルキャンペーン。産業・貿易・投資・観光・スポーツ・文化など、さまざまな英国の魅力を世界に向けて訴求する「GREAT キャンペーン」の柱のひとつとして、環境・食糧・農村地域省(Defra)が英国国際通商省(DIT)とのパートナーシップのもと主導し、取り組んでいる。

販売に関する問い合わせ:ベリー・ブラザーズ&ラッド日本支店
http://www.bbr.co.jp/

Promoted by 英国国際通商省 / text by Yuki Oda / photograph by Sakiko Adachi / edit by Akio Takashiro