大きな課題は熱処理だ。速度が上がれば上がるほど、熱も上がる。
「6分5秒は非常に速いタイムだけど、ID.Rの熱処理の能力が良ければ、もっと速いタイムが出ただろう」という同僚もいた。また別の同僚は、「ラップの途中から最高速は落ちていきました。モーターなどが熱くなって性能が落ちたということです。電気自動車のネックですね」という。また、EVは、中近東などの暑い環境と、北海道などの寒い環境では、バッテリーの能力が落ちる。
陸上界において、カール・ルイスが1991年に出した9秒86やアサファ・パウエルが2006年に出した9秒74は一時的に世界記録だったけど、やはりウサイン・ボルトが2009年にベルリンで出した9秒58は世界を圧倒した。
今回VWのID.Rがニュルブルクリンクで出した6分5秒という速さは、ただの記録ではない。これはボルト選手並みの、業界を変えるほどの新記録だ。VW社が実際にこのID.Rの記録をどう生かすか。本当に興味深いのは、その点だ。
連載:国際モータージャーナリスト、ピーターライオンの連載
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