小学校から「AI教育」導入、台湾政府のサバイバル戦略

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台湾政府は、世界的なハイテク競争で生き残りを図るためAI人材の育成を強化している。台湾は長年、電子機器の受託生産を強みとしてきたが、最近では海外企業の多くがより安価な中国に製造をシフトしている。

一方でこの1〜2年でグーグルやマイクロソフト、エヌビディアなどの大手IT企業が、AI分野で台湾への投資を拡大している。台湾はハードウェアの受託生産から脱却し、世界的なAIの研究開発拠点へと変貌を遂げようとしている。

台湾政府は、海外からの投資を拡大させるため、AI人材の育成に力を注いでいる。蘇貞昌行政院長は、AIの研究開発に従事する人材を毎年1万人育成することを目指している。台湾は過去数十年に渡り、大学でエンジニア育成に取り組んできており、AI人材の育成への転換は自然な成り行きだと言える。

テック業界のアナリストによると、シリコンバレーのIT企業は、台湾政府のこうした取り組みを魅力に感じ、現地に拠点を設けているのだという。

蘇貞昌行政院長は、5月16日に発表した声明で、「この2年弱で、台湾はAI分野で革新的な進化を遂げ、世界中が注目するようになった。海外のIT大手が台湾に設置したAI拠点は台湾の競争力だけでなく、国民の生活の質も高める」と述べた。

台湾は、AI教育を小学校や中学校から開始しようとしている。今年から公立学校にAIの教材が導入されたほか、政府が共同スポンサーとなっているAIのオンライン授業には、1000人が申し込んだという。

在台湾米国商工会議所の会頭を務めるWilliam Foremanによると、米IT企業は、台湾人エンジニアの質や業務への忠誠心、信頼性を高く評価しており、アジアの他の地域よりも台湾をAIプロジェクトの拠点として選んでいるという。

台湾は1980年代からエンジニアを育成してパソコンなどハードウェア製品の受託生産を手掛けてきた。現地メディアの記事によると、ハードウェアからAIにシフトしたことで、新卒エンジニアの平均初任給は、1084ドルに増えたという。

それでも、台湾ではAI人材が不足しているという。「台湾では、これまでもコンピュータ・サイエンス分野の人材に対する需要が非常に高かった。今後、多くの企業がAIを導入するに当たり、人材不足はますます深刻化するだろう」とForemanは話す。
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編集=上田裕資

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