──レズニック教授の研究や活動は、日本でも注目されています。まず、最新の取り組みについて教えてください。
今年(1月3日)、「スクラッチ」の次世代版「スクラッチ3.0」を立ち上げた。スクラッチは、子供たちがコンピュータでプロジェクトを生み出し、自己表現できるプログラミング言語のオンラインコミュニティーだ。スクラッチ3.0を使えば、ロボット系デバイスなどのハードウエアをコントロールし、センサーからの情報をインプットできる。種々のウェブサービスにも接続でき、生活に密着した多くの事柄とリンクさせることができる。
世界中の子供たちが私たちのツールを使って何かを創造することは、このうえない喜びだ。世界中の何千万人もがスクラッチを使っている(注:2019年4月10日現在、登録者数は約3,910万人)。毎日、誕生する新プロジェクトは20万以上だ。昨年、日本では、毎月、約20万人の子供たちがプロジェクトを生み出した。
私たちが心掛けている点の一つは、スクラッチを世界中の異なる文化に溶け込ませることだ。19年3月、南アフリカを訪れる機会があった。同国政府が(小学校に)プログラミング授業を導入し、スクラッチが使われることになったからだ。世界中の人々と協働し、子供らが「創造的思考者」として成長できるよう努めたい。
また、低所得層の子供たちを対象にした放課後学習センター「コンピュータ・クラブハウス」も続けていきたい(注:現在、19カ国100カ所超のクラブハウスがある)。年次大会では、世界中のクラブハウスのリーダーらが一堂に会する。
──研究グループの名称である「ライフロング・キンダーガーテン(生涯幼稚園)」に込められた思いとは?
子供らが幼稚園で学ぶ姿を見ると、いつも元気づけられるからだ。仲間と協力し合い、何時間でも夢中になって、遊び心あふれる創造的なものを生み出している。木製ブロックで塔を作ったり、フィンガーペイントで絵を描いたりしながら、構造や色の混ぜ方などを学んでいる。
中でも重要なのが、創造的なプロセスを学ぶことだ。発想し、それを形にする方法である。子供たちが幼稚園の学習スタイルで協働し、楽しみながら何かを創り出せるような環境が、彼らにとって、将来に備えるための最善の道と言える。
物事が急速に変わる中、将来、どのようなスキルが必要になるかわからないが、創造的に考えて行動し、予期せぬ事態に革新的アプローチで臨み、創造的思考者として成長することが必要になる。
だが、学校に通い出すと、座って教師の話を聴き、課題をこなすだけで、創造的な能力を伸ばせない。米国では今や幼稚園も学校化し、算数の課題などをこなす場所になりつつあるが、私たちの望みは、学校が幼稚園のようになることだ。