欧州のユニコーンの成長速度が米国の競合を上回りつつあるというデータは、投資銀行のGP Bullhoundが6月5日に発表したレポート「Titans of Tech」で開示された。
今年で6回目を迎えた同レポートによると、2000年以降に設立の欧州のユニコーン企業の評価額の合計は昨年、28%の上昇となった。一方で、米国のユニコーンの評価額の伸びは20%に留まった。
昨年の1年間のみで、欧州では21社のユニコーンが誕生したという。欧州のユニコーンの数は2014年には30社だったが、現在は84社に達しているという。
同レポートによると、2018年に世界の投資家が欧州のユニコーンに注いだ金額は、史上最大の280億ドルに達し、企業価値の急騰が起こったという。GP Bullhoundは欧州のテック系ユニコーン全体の価値を3020億ドルと試算している。
これは2014年当時の890億ドルと比較すると、3.4倍に相当する。評価額の上昇には、スポティファイのIPOが大きく寄与していると見られている。
ただし、このニュースは少々、割り引いて受け止めるべきものなのかもしれない。欧州のテック企業らは米国やアジアの大手と比べれば、依然として劣勢だ。米国にはマイクロソフトやアップル、アマゾンなどの巨大企業があり、中国にはアリババやテンセント、ファーウェイらがいる。日本のソフトバンクや韓国のサムスンも巨大な勢力を誇る。
GP Bullhoundは今後2年の予測も立てている。同社によると欧州では2021年までに、新たに500億ドルの価値がテック分野で生み出される見込みで、それを牽引するのがスポティファイや昨年6月にアムステルダム証券取引所に上場した、オランダの決済企業「Adyen」だという。
しかし、これはかなり野心的な見積もりといえる。スポティファイの時価総額は現在約220億ドルで、Adyenは約200億ドルだ。GP Bullhoundの予測を現実にするために、この2社は今後2年で価値を2倍以上に高める必要がある。
欧州のテック分野が巨大企業を生み出せていないことは以前から指摘されており、今回のレポートのように、巨大な成功が間近に迫っているとの見方も繰り返し述べられてきた。近年、欧州のスタートアップが注目を集めていることは事実だが、事態を冷静に受け止めることが必要だ。
1972年にドイツで設立され、ビジネス向けソフトウェア分野の巨人となったSAPのような例外を除けば、企業価値500億ドルを超えるテック企業は欧州では生まれていない。