専門知識を顧客に伝授
フィレンツェ郊外に開設されたグッチのコールセンターには、高度な訓練を受けたサービスの専門家150人が常駐する。ニューヨークと東京、ソウル、上海、シンガポールにも同様のセンターを設置し、総勢500人のアシスタントを採用する計画だ。
顧客は電話のほか、メール、ライブチャットでアシスタントと会話することができる。アシスタントには、店舗での接客と同じように、顧客と個人的な関係を築く努力をすることが求められている。
グッチは今後、「グッチ9」と名付けたこの施設を通じた取り組みに、特に力を入れていく方針だ。実店舗の来店客数を増やし、顧客との関係を深め、最終的には売上高の伸びにつなげていきたい考えである。
新しい体験を提供
今年1月にオープンした「アトリエ ボーテ シャネル」について、米ノーション・コンサルティングのクリスティン・アンドゥルコニスは、「シャネルのチームが長期的な視点に立っており、将来価値ある資産になり得る顧客との関係構築を目指していることは明らかだ」と語る。
顧客はロッカーに荷物を預け、スマートフォンだけを手に店内に入る。アプリをダウンロードすれば、商品やそれらの使い方に関する情報を受け取ったり、後で購入するときのために気に入った商品を記録しておいたりすることができる。
このコンセプトストアはシャネルにとって、顧客との新たな関わり方を確立するための実験であり、単に売上高を伸ばすことだけを目的としたものではない。
「新しいエンゲージメント」へ
アンドゥルコニスによれば、「高級品を購入する消費者層は今、テクノロジーがもたらす効率性とスピードに、人間的なやり取りが加わった形でのパーソナライゼーションを求めている」。
人間的な要素とテクノロジーの力を組み合わせたグッチとシャネルの大胆な実験は、双方に新たな見識をもたらすだろう。そして、それは必ず、今後のイノベーションにつながると考えられる。
アンドゥルコニスはまた、「こうした現代的なショッピング体験の提供を実現するには、企業は戦略的で機敏であり、記録を塗り替えるようなスピードで試し、学び、成長していくことができなくてはならない」と述べている。