ビジネス

2019.06.06

ネットフリックスが債務を増やしてもつぶれない理由

(Photo by Chesnot)


資本構造の最適化
 
ネットフリックスは、資本コストを最適化するため債務を増やして資金繰りを行うことを選んでいる。正直なところ、これだけでも多くのことが分かる。多くの企業は資本コストを知らないか、計算しようともしない。
 
先述のように、コンテンツ費によりネットフリックスは資本支出が高いビジネスとなっている。どんな業界でも同じだが、高い資本支出は参入の障壁となる。ネットフリックスが2018年にコンテンツにかけた費用は約130億4000万ドル(約1兆4000億円)だ。同年の支出は約99億7000万ドル(約1兆800億円)で、約30億ドル(約3200億円)の差は資本支出として分類できる。
 
ネットフリックスは「バランスシートを最適化する上で、当社は加重平均資本コストをできる限り抑えるような資本構造を目指している。低金利、債務の税控除、当社の企業価値と比較した債務の低さを考慮すれば、債券市場を通して成長のための資金を調達することは現在、株式を発行するより効率的だ」とはっきり述べている。
 
固定費が高いビジネス
 
ウォールストリート・ジャーナル紙は「これは降りるのが難しいランニングマシンだ。新たなコンテンツで会員が獲得できるのならば、論理的に考えると、支出とコンテンツを削減することで会員を失う恐れがあるということだ」と指摘している。
 
同紙がここで考慮できていないことは、ネットフリックスのコンテンツが固定費だということだ。固定費が高い他ビジネスと同様、ネットフリックスでは売り上げがコストを上回るまでは、コストの方が得られる収入よりも高い状態が続く。固定費が高いビジネスモデルの基盤は量の追求であり、ネットフリックスはこれを積極的に推し進めている。
 
この転換点は近づいているかもしれない。ネットフリックスのフリーキャッシュフローは2020年、マイナスにとどまりつつも改善が予測されている。営業利益と利益が上がれば運転資本ニーズも向上する。私はこれが転換点になると予想している。
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編集=遠藤宗生

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