混迷するブレグジット問題、英国は離脱で何を得るのか

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英国は何を得るのか?

英国がレアルポリティーク(現実政治)に走るのは主に、政治家たちが金融サービスに注意を向けてこなかった結果でもある。ロンドンは英国の中でも、非常に豊かな地域だ。離脱派の有権者の多くは、大嫌いなEUと密接な関わり合いを持つロンドンと、国内の他の地域との1人当たりGDPの大幅な格差を批判してきた。

政治家たちにとって、ブレグジットに関して銀行を守ることは、自動車メーカーや農家を守ることよりずっと「売り込む」のが難しい問題だ。彼らがサービス業界をほぼ無視して、モノの輸出に対する影響の緩和ばかりを重視してきたのは当然ともいえる。

ただ、そうした政治家たちの態度が正しかったと考えられる面もある。(離脱すれば)ロンドンが欧州で最大の、多額の利益が見込めるオフショアセンターになることだ。ロイター通信によれば、シティ(カナリー・ワーフを含む)への不動産投資は昨年、増加している。明らかに、ブレグジット後のロンドンが投資機会を提供するものだと考える人たちがいるということだ。

英国の金融業界は、EUが交渉において優位に立つことができない可能性がある分野だ。与党・保守党の離脱強硬派は多かれ少なかれ、EUが自分たちの主張をのまなければ、英国をEUのオフショアセンターにすると脅してきた。そして、離脱強硬派は保守党内で勢力を増している。

革新を続ける金融サービス業界は、離脱の強硬や合理なき離脱にどのように反応するのだろうか? 筆者も自分がこう書いていることに驚いているが、そう考えてみれば、ロンドンの新たな国際的な役割が、霧の向こうに見えてくるかもしれない。

英国の有権者が、自国経済における金融サービスの影響力がさらに拡大すること、ロンドンがさらに豊かになることを望んで離脱を支持したのかどうかは分からない。だが、ブレグジットが結果として、それらをもたらす可能性はある。

編集=木内涼子

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