ビジネス

2019.06.06

イノベーションの祭典VivaTechで見た「不都合な真実」


一方、アフリカから世界市場を目指すスタートアップにとっては、VivaTechは重要な機会であることは間違いない。VivaTechには南アフリカのケープタウンを拠点にアフリカ大陸におけるテクノロジースタートアップのエコシステムを構築するAfricArenaが10のスタートアップを引き連れて参加した。

AfricArenaは毎年11月に、アフリカ版Slushとも言うべきスタートアップイベントを開催。アフリカ代表としてVivaTechに参加した10社は、昨年のAfricArenaで選抜された。10の内訳は、セネガルから2社、ケニアとモーリシャスから1社ずつ、残り6社はすべて南アフリカ代表で、残念ながら少し偏りがあった。

VivaTechでのピッチを経て、アフリカで最もイノベーティブな会社として選ばれたのは、南アフリカのアグリテックAeroboticsだ。同社は、ドローンで撮影した画像データとAIソフトを活用した木の害虫や病気のモニタリングプロセスに特化したサービスを提供する。ケープタウンが拠点だが、すでに18以上の国にクライアントがいるという。

ウェブサイトを見る限り、同社のチーム構成は南アフリカ全体の人種構成を反映しているとは言い難いが、アフリカ発のイノベーションが世界に波及していくことは、前向きなニュースだ。

VivaTechの共同創業者、ヴァンサン・ヴィオレン(Vincent Viollain)に話を聞いたところ、アフリカにフォーカスすることはVivaTech自体が他のテクノロジーカンファレンスとの差別化を図るための要素であり、来年も引き続きフォーカスしていく予定だという。

アフリカと世界のための「アフリカン・ソリューション」

さまざまな企業、プロダクト、サービスが溢れる中、個人的に注目したアフリカテックの事例を3つ紹介したい。

1つは、アフリカ視点での音楽ストリーミングサービスを提供する、いわばアフリカ版スポティファイ、DeeDo。セネガル人起業家アワ・ジラール(Awa Girard)が仕掛人だ。フランスとセネガルを拠点に、西アフリカおよびフランスとUKに展開する。

スポティファイのようなグローバル・プラットフォームにおいて埋もれてしまうようなアフリカの若手ミュージシャンや、デジタルでは見つけるのが難しい少し前のアフリカ出身の音楽家たちの楽曲を中心にすることで、アフリカの人々やディアスポラ(移民)たちのニーズを捉えた。他方で大手音楽権利会社との契約を控えており、いわゆるメインストリームの音楽とアフリカの音楽、どちらも聴けるようなプラットフォームを目指しているとジラールは言う。

2つ目は、アフリカで製造する手頃な価格のスマートフォンMara Phone。アフリカ25カ国で、テクノロジー、銀行、不動産、インフラなどのサービスを展開するMara Groupが手がけるアンドロイド携帯だ。現在、Mara XとMara Zの2種類が発売中。価格はそれぞれ159ドルと、219ドルだ。



同社スタッフによると、現在一部はトルコなどでの生産となっているが、今年の7月頃には南アフリカ、ルワンダを中心に製造拠点をアフリカに完全移行し、全世界に配送できる体制が整うそうだ。

Eコマースサイトは、アップルを意識したような仕様。Mara Phoneはアフリカ人による、アフリカ人のための、高品質で手頃な価格のスマートフォンとして、アフリカを中心に新たな市場展開を狙っているようだ。世界発のアフリカ製スマホの普及に期待したい。
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文=MAKI NAKATA

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