ところが、当のFRBが実施した新たな研究で、経済が健全かどうかは、人によってまったく見方が異なることが明らかになった。
言い換えれば、分配ですべてが決まるということだ。安定した景気の拡大と、失業率の歴史的な低水準によって、所得と富における深刻な格差が覆い隠されている。こうした格差によってアメリカの各家庭は、非常に異なった経済状況に置かれている。
なかでもFRB報告書は、貧困状態にあるアメリカの下層50%が、拡大し続ける格差にまさに押しつぶされつつあることを明らかにしている。
FRBのエコノミストは、格差に関する新しいデータセットを要約した論文において、「富の分配における上位10%が総資産の多くを保有し、その割合は増える一方だ。下位半分の保有割合は、ほとんど見えないほど少ない」と述べている。そのデータセットは、既存の統計よりもタイムリーなものだ。
データは、「アメリカ全世帯の純資産合計は1989年以降、名目で4倍以上になっているが、その増加分は明らかに、分配が下層ではなくトップのものであること」を示している。
2018年を見ると、最も裕福な10%が、家計資産合計の70%を所有している。この数値は、1989年には60%だった。トップ1%に流れ込む割合は、1989年の23%から、2018年には32%に跳ね上がった。
論文には、「上位10%の保有資産割合の増加は、富の配分における50~90パーセンタイルの資産を犠牲にして成り立っている」と書かれている。
50~90パーセンタイルの層が保有する割合は、同じ30年間に29%まで減っている。基本的には、下層50%は、その30年間で資産の純増がゼロだったことになる。そのため、かねてから少なかった総資産割合は、4%から1%に引き下げられる結果となった。