世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版

近年の「女性活躍」は、それ自体が目的化してはいないだろうか。仕方なしの男女半々、女性登用…それで本当に世界は変わるのだろうか。

カルティエは「女性活躍」が世界的な盛り上がりをみせる前の2006年からカルティエ ウーマンズ イニシアチブ(以下CWI)をスタートさせ、これまでに数多くの女性起業家たちの背中を押してきた。

2006年から開催されているCWIはカルティエとINSEADビジネススクール、マッキンゼー・アンド・カンパニーによって設立された、女性起業家が主導するプロジェクトを支援する国際ビジネスプランコンペティションだ。

14回目の開催となる2019年、CWIのアワードウィークの熱気が冷めやまぬサンフランシスコでForbes JAPAN編集部は、カルティエ インターナショナル プレジデント&CEOのシリル・ビニュロン氏に独占インタビューを実施した。カルティエがCWIにかける思いとは。


──CWIが設立された経緯をお聞かせください。

13年前にWorld Women’s forumの一貫で、女性起業家の支援を目的として設立されました。その当時は女性起業家を支援するベンチャーキャピタルはわずか3%だというデータがあり、この点は発展させる必要がありました。

私たちカルティエの“ものづくり”は、良質なものを創り、お客様に幸せな気持ちになっていただくことです。ただ利益だけを追い求めていては、素敵なものは生み出せません。これはCWIも同様です。利益の有無にかかわらず、良いことをサポートするのです。

私たちが女性起業家を支援するのは、良いものを生み出してもらい、皆さまに幸せになっていただくためです。私たちの名前が、彼女たちの事業の信頼を得る手助けができれば、これは世界にとても良い連鎖を生むと信じています。

──設立から14年、女性起業家をめぐる環境の変化に合わせ、どのように発展してきたのでしょうか。

3年前に、なにかもっと違う次元でインパクトを持って進めることは出来ないか、と考えました。そこでいくつかの変化を加え、今日までに様々なアップデートを実現しました。

1つ目はWorld Women’s forumからの独立です。その際、新たなパートナーを見つけました。それがマッキンゼーとINSEADです。彼らとパートナーになってからは、選考の行程やコミュニティ作りもかなり強力なものとなりました。

2つ目の変化は受賞者へのプライズの見直しです。過去は2万7000米ドルでしたがそれを10万米ドルに変更しました。そして、受賞者以外のファイナリストも3万米ドルの賞金がもらえるようにしました。

3つ目の変更は選考の期間です。1年かけて選考します。

そして4つ目は、アジアのセクションでは広すぎると考え、発展著しいアジアを、極東アジアと東南アジアの2つに分けることで、選考地域を世界6エリアから7エリアへと拡充しました。

そして選考のサポートも改善に努めました。自身の事業を発表することはもちろん大事なのですが、どのようにして参加者たちが繋がり、CWIをより強固なネットワークにするかはもっと意義深いと考えました。ファイナリストたちは自身の地域では孤独状態です。CWIがグローバルなコミュニティを作ることで、女性起業家同士も似たような境遇を共有できたり、助けが必要な時に連絡をとれたりするようになります。


アワードの会場には、椅子が多く配置されネットワーキングが盛んに行われていた。

そして私たちがつくってきた、女性起業家を中心としたグローバルなコミュニティはどんどん広がりを見せるのです。CWIはイニシアチブです。CWIでの縁を、一度きりのものではないようにしています。何より大事なのはコミュニティを作ることなのです。

毎年実施することで、より強靭な繋がりを作っていくことができています。ただアワードのためにやっているのではありません。アワードはたった1日ですが、彼女たちの人生はこの日以外もあるのです。

そしてCWIは、修正を加え次のレベルに進もうとしています。さらなる成長をさせて、さらに拡張していけるのではないかと考えています。ここまで続けられたのは全て、素晴らしい参加者たち、彼女たちの素晴らしい事業とそのエネルギーのおかげです。

私たちはただの庭師です。花はタネからできますが、私たちが作っているのではありません。彼女たちが、私たちを作ってくれているのです。


アワード前日に開催されたWINGでのイベントの様子。参加者たちは情報交換をするなど積極的なコミュニケーションが行われていた。

──CWIの今年の傾向をお聞かせください。

応募者は健康・医療やテクノロジー系の事業が多かった印象です。また今年のテーマの、”波及効果”のように、自分の地域のみならず、グローバルな広がりが期待できる社会問題を解決する事業が多いと感じました。

毎年の応募者の傾向を見ていると、その時々の社会問題、世界のリアルな状況を知ることができるのです。その問題にファイナリストたちは現実的な解決策を見出しているのです。

──CWIと他のアワードの違いをお聞かせください。

他のビジネスアワードの多くは、印象的で素晴らしいビジネスを「識別」し、ビジネスを讃えるという印象です。また賞金も、大きな金額を優勝した1人の受賞者に贈ることが多いのではないでしょうか。

まず私たちCWIは、女性起業家に限定しています。なぜなら彼女達には男性の起業家に比べ、支援者を見つけることなど、あらゆる困難が想定されるためです。

また、CWIで選ばれる企業は収益をあげるためだけではなく、社会に影響を与えることが目的のビジネスであるという点です。直面している問題をどのように解決しているのかということなのです。これを元にしたネットワークは利益だけを求めている企業とは違い、共に歩むというコミュニティとなることができるのです。

CWIでは授賞式までの最後の1週間でプレゼンテーションの練習やビジネスプラン構築など、多くのプロジェクトもあり、6ヵ月前からはコーチングでどのように準備するのか、どのようにすればピッチをより印象深いものにできるのかなど、コミュニケーションのコーチ、ファイナンシャルのコーチ、ビジネスのコーチがつきます。この経験はファイナリストたちにとって忘れられない経験となるでしょう。

そしてCWIのファイナリストという称号をスタートアップ企業が得られることで、大企業からの協業や、仕事の依頼が来るようになります。CWIはまさにリレーションの連鎖なのです。ここで培ったネットワークと濃密なコミュニケーションが、“波及効果”のように拡張していくのです。

また、ファイナリストたちの間には、姉妹のような絆が生まれるのです。「お姉さんと妹」、シスターフッドです。これは女性間では特に強力なものであると思っています。女性のネットワークは結束力が強いと思っています。これが違いです。



──今後のCWI の展望を教えてください。

現時点で非常に良い効果を生み出す取り組みですので、展望としては“サステナビリティ”、とにかく継続していくこと、です。そして、ファイナリスト、コーチ、メンターたちのリレーションをさらに拡張していくことです。

これは、展望というより私自身も疑問に近いのですが、なぜ英語でやることに限定されているのかということを考えています。実は私たちは他の言語でのオリジナルコンベンションを考えています。例えば、それぞれの言語でのコンペティションがあり、そしてそのあとインターナショナル版として英語で実施するものがあるというイメージです。

例えば、日本語対応のものがあれば、もっと多くの方にご応募いただくことが出来るのではないか、フランス語、スペイン語、アラビア語、韓国語、中国語……など多言語展開が出来れば、とそんな構想も描いています。まだ、ドリーム……構想という段階ではありますが、もしかしたら近い将来、複数言語での実施のお知らせが出来る日が来るかもしれません。



──カルティエ ジャパンでのプレジデント在任時のご経験などから、かなり日本にお詳しいと聞いています。そんなシリルCEOから見た、日本の女性の印象はいかがですか?

一般的にいえば日本女性の気質としては、少し自身を抑えがちでではないかと思います。あまり感情を表に出さず静かにしている。三歩後ろにいて、あまり話さず、自己表現もあまりせず、という奥ゆかしさがある印象です。

──日本人の女性がより自己表現ができるようにするにはどうしたら良いと思いますか?

これを克服するのはなかなか簡単なことではないと私は思います。近くの国である韓国とは全く違う文化です。感情を表現することというのは自然なことですが、日本ではあまり自然なことではないように思えます。これは根強い日本女性の文化になっている印象です。

音楽もそうです。とても素敵なものが多いですが、とても自分自身の思いを抑えている印象です。日本女性はもっと外に表現をしていいと思います。彼女たちが世界に影響を与えることが出来ることがたくさんあると信じています。

──最後に日本人女性で、CWIの応募を考えている方にメッセージをください。

(全て日本語で)

「できる」「頑張って」「絶対」「いける」です。

これに尽きます。

サンフランシスコでのアワードを通してForbes JAPAN編集部が再認識したのは、社会課題を解決しようとする世界の女性起業家たちの溢れんばかりの熱気と、それを支援するカルティエのマインドには、まさに社会を変えていく力があるという事実だ。

市場はあるか、収益を生み出せるかという視点だけでなく、より本質的に人類の課題に向き合い、社会的なインパクトを起こす可能性のある事業を支援しようとするカルティエの姿勢に大いに賛同したい。個々の事業や個々人の女性起業家を支援するだけでなく、長期的な目線で女性起業家を増やすための努力や、投資家も含めたネットワーキングやコミュニティ形成をも担う努力に、カルティエがCWIに賭ける「本気」を感じた。

ダイバーシティを実現し、女性が自らリーダーシップを取って自由闊達に活躍する企業は、ビジネス面でより高いパフォーマンスを出しているという調査がある。女性の感性や知性を活かすことで、世界の様々な課題に対しイノベーティブでクリエイティブな解決が可能となるのだ。

ほかのビジネスアワードとは一線を画す独自性を持ったCWI。女性の感性と知性を生かしたさらなる価値創造の連鎖=“波及効果”が広がっていくことこそが、本来の”女性活躍”なのではないだろうか。

CWI 2020年度のご応募、詳細はこちら

連載
「Women will change the world」
ー世界規模でビジネスと課題解決を加速させる そんな女性たちを、つなげるー

Story01:公開中|世界中の女性起業家が集うコンペティション「CWI」。彼女達が得たものは、国を超えたネットワーク
Story02:公開中|「CWIA」の夜に放たれた、起業家女性たちの世界へむけた情熱のメッセージ。
Story03:本記事|カルティエCEOに聞く。世界レベルの女性起業家支援CWIの本当の意義、そしてその未来

Promoted by カルティエ / 文=飯村 彩花、林 亜季 / 写真=© Cartier

あなたにおすすめ