どうでもいい仕事とは何か?
どうでもいい仕事とは、あまりにも意味がなく、必要性がなく、または悪質であるため従業員でさえその存在を全く正当化できない、しかし雇用条件の一つとして、そうではないというふりをしなければならない義務感を感じる有給雇用の一形態のことである。賃金が低く誰もがやりたがらない仕事とは異なる。そのような仕事は多くの場合、必要性が明白だからだ。どうでもいい仕事の例を説明する。
(1)召使いの仕事
別の人が自らの重要性を感じるためにある仕事。ドアマンやビルのコンシェルジェ、ミントを補充するだけの受付係、指示を受けるだけの秘書、管理職を作るための補佐的ポジションなど。
(2)ならず者の仕事
偽の広告やPR、営業、マーケティングなどの仕事。歯を白くしたり痩せて見えるように動画を加工して、商品の需要や有効性を誇張し、消費者に不要な商品を売りつけたりしている。
(3)ガムテープ係
組織的な欠陥が理由で存在する仕事。無能な上司の間違いによるダメージを回避したり、機械化できるのに組織の都合で手作業でやっている仕事など。そもそも存在してはいけない問題の解決をしている。
(4)チェック要員
組織が特定のことをしている(もしくはしていない)と主張するためだけに雇われている人。利用されずに保管されるだけの住民調査の回収係や、提出することだけが目的で内容がない報告書や社内広報誌の作成者、そのためのコンサルタントなど。
(5)タスクマスター
意味もなく誰かに仕事を振るだけの人や、ほかの人にどうでもいい仕事を振る役割の人。部下に指示の必要がなく、仕事を割り振るだけの中間管理職など。
グレーバーは本書の目的について具体的な政策の処方箋の提案ではなく、「純粋に自由な社会とはどのようなものであり得るのか」について、思考と議論を始めることだ、としている。
デヴィッド・グレーバー◎ロンドン政治経済大学(LSE)人類学教授。ニューヨーク州立大学パーチェス校卒。マダガスカルのフィールドワークでシカゴ大学博士号を取得。アナキストの活動家としても知られ、ウォール街占拠運動の理論的指導者。イェール大学を解雇された後、ロンドン大学ゴールドスミス校を経て現職。