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ある雨の日曜日の午後、ピーターは妻のエレンが目に涙を浮かべ、窓越しに庭を見ていることに気づいた。それは、2人の末娘が結婚式を挙げた翌日の午後のことだった。

ピーターはエレンに近づき、「あの子は昨日、とてもきれいだったね」と語りかけた。エレンは「そうね。2人はとても幸せになると思う」と答え、夫に笑顔を見せた。ピーターは「じゃあ何がそんなに悲しいの?」と尋ねた。するとエレンは「悲しいんじゃなくて、とてもうれしいの」と答えたが、その目からは涙がこぼれ落ちた。

エレンは、末の子が幸せに結婚したこと、そして子どもたちを立派に育て上げた達成感に喜びを感じるべきだということが分かっていた。しかし、ほんの少しの寂しさとむなしさを感じ、目的を失ったとさえも感じていた。

片方は感情的、もう片方は合理的な考え方だ。これはただ、人間であるということだ。

人間の精神は、考えと感情、いわゆる「頭」と「心」で明確に二分されている。これらは問題なく共存し機能できる時もあるが、多くの場合はそれぞれの利害を巡り対立しているため、折り合いをつけるのが難しい。

はっきりしているのは、人間の精神の発達にはとても長い歴史があるということ。私たちは人類の歴史を通し、実に長きにわたる進化を経験してきた。私たちの感情も同様だ。しかしまとめれば、現在私たちが持つ感情とその感じ方は、次に挙げる2つの主な要素によりもたらされたものだ。

1. 周囲への生物学的な反応

感情とはつまるところ、行動をもたらす第一の衝動であり、進化に沿った形で命を受け渡していくためのものだ。動物や子どもを観察すれば、あらゆる感情に突き動かされ、何も考えずに行動する傾向があることが、よりはっきりと分かる。こうした感情は、生き残りを目的とした正しい反応を体が起こせるよう、生理学的な準備をするものだ。

人は怒りを感じると、血が手に流れ込み、心拍数が上がり、アドレナリンなどのさまざまなホルモンが増加し、必要な戦いに備えて自分が生み出したエネルギーを使い精力的・暴力的に反応しやすくなる。

幸せを感じると、脳の中枢部分の活動が増加し、ネガティブな感情は阻害され、不安を生む部分の動きが全て鎮まる。冷静で熱意のあるこの状態により、目標を設定しその達成に向けて努力しやすくなる。

逆に悲しみは、日々の活動に対するエネルギーやわくわくした感情を低下させ、体の新陳代謝を鈍化させる。こうして周囲の世界から離れることで、悲しむためのスペースを確保し、悲しみで弱体化した人は、より安全な“安らぎの場所”周辺にとどまれるようになる。

また、愛情と優しい気持ち、性的満足感は、副交感神経を刺激し、満足感や協調性、調和を求める気持ちを促す「リラクセーション反応」を引き起こす。

編集=遠藤宗生

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