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被験者は2つのグループに分けられ、うち50人は仕事を始める前に、「2時間で57.50ドルの報酬を得る」として自分の給与が1分あたりいくらになるかを計算させられた。

残りはまったく同じ仕事をしたが、事前に1分あたりの給与を計算するという指示は与えられなかった。つまり、どちらのグループも同じ2時間の作業に対して同じ給与を保証されていたにもかかわらず、最初のグループのほうは自分が1分あたりいくら稼いでいるのかという意識を最初から持っていたということだ。

この意識の生理的・心理的影響を調べるため、フェファーとカーニーは被験者一人ひとりの唾液腺のコルチゾール値を2時間の作業の前後にそれぞれ測定した。その結果は、憂慮すべきものだったとフェファーは言う。「時は金なり」グループのコルチゾール値は25%近くも高く、実験中に2度の休憩を与えられて芸術を鑑賞したり音楽を聴いたりすることが許されている間にも、あまり楽しいと感じていないようだったのだ。

「コルチゾールはありとあらゆるマイナスの身体的影響にかかわっている」とフェファー。「25%近くの上昇は、深刻な健康上の影響だ」

フェファーは、非正規労働者が単発で仕事を請け負ういわゆる「ギグエコノミー」の隆盛を考えると、今回の実験結果はとりわけ悩ましいと言う。「ギグエコノミーがもたらすストレス誘発的な側面は、人類全体の健康に影響を与える可能性がある」と研究では結論づけている。

「現代では多くの人が常に、自分の時間の経済的価値を計算している。そしてどの調査結果を見ても、時間と金額を関連づけて考える人は、人生を楽しめていないことがわかります。彼らには忍耐力がなくなり、音楽や沈む夕陽を楽しむことができない。子どもにサッカーを教える時間が『収入いくら分』になるかを計算しても幸せにはなれない」

だが、それだけではない。フェファーはこうも言う。

「多くの企業、とくに大手企業の意識は、どれだけ二酸化炭素を削減できたか、どれだけ梱包材量を省けたかに向かいがちです。たしかに地球環境保全に対する努力も必要ですが、少なくとも同じくらい、人のことも気にするべきです」

フェファーは、雇用主が「時は金なり」思考をやわらげ、正規雇用者でなくとも、時給ベースではない制度に切り替えることを検討してもよいのではと提案する。「われわれはまったく健康的ではない、非常に過密なスケジュールの元に暮らしていますが、中でも、自分の時間の『金銭的価値』を常に考えている状態は、決していいことではありません」とフェファーは言う。

ちなみに今回の研究では、ギリシャのイカリア島の住民があまり時計を気にしない、非常に長生きしている、という結果も出た。

翻訳=松本裕/株式会社トランネット 編集=石井節子

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