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彼らの研究によれば、たった15分の瞑想、たとえば呼吸に意識を集中させたり、ボディスキャン(意識を体の色々な部位に動かしながら集中させていく)をしたりすることで、この厄介な意思決定バイアスに対する抵抗力を高め、より合理的な思考への道筋を切り開けるようになるという。

「過去の研究を見るかぎり、(経済的、感情的などの形で)何かに投資すればするほど投資をやめるのが難しくなり、取り組みをエスカレートさせる傾向がより強くなる」とハーフェンブラックは記している。

「多くの場合、マイナスの感情である恐怖や不安、後悔、あるいは過去の決断に対する罪悪感や心配が、無意識に意思決定プロセスに働きかけるのだ」

もっともよく知られた例としては、1960年代のベトナムにおけるアメリカの軍事行動、最近では中東での軍事行動が挙げられる。死者数が増えるにつれ、アメリカ政府はますます手を引きづらくなってしまったのだ。実業界では、競合他社に先を越された企業が商品にこれ以上資金を投入するべきか、コストが当初の見積もりをはるかに超えてしまったときに投資を続けるべきかどうか、といった決断を迫られる。それは商品がただ期待していたほど売れないというだけの問題かもしれない。超音速ジェット機コンコルドが儲からないとわかってからもずっと、フランスとイギリスが投資を続けたのがいい例だ。

マインドフルネス瞑想で、失ったものを「あきらめる」

キニアスによれば、MRIで脳をスキャンすると、人の精神状態は常に、ひとつの思考からまた別の思考へと飛躍し、過去から未来、現在と秒単位で切り替わっていることがわかるという。いわば、思考は常に「飛び回っている」のだ。

一連の研究を通じて、先のハーフェンブラック、キニアスとバルセイドは仮説を立て、マインドフルネスによる瞑想を行い、現在に意識を集中させることでこの思考の「飛び回り」をしずめ、思考をゆがめるネガティブな感情を減じ、サンクコスト・バイアスへの抵抗力を高められることを発見した。

彼らは、「マインドフルネス特性」と「サンクコストに抵抗する個人の能力」との関連性を証明する相関的研究から始めた。マインドフルネスの度合いは性格によって異なるので、キニアスらはまず、この特性について、被験者の評価を行った。

次に、被験者に、10種のシチュエーションについて意思決定をするよう指示した。シチュエーションは架空のビジネス上の選択もあれば、「もう代金を払ってしまったのに悪天候や病気のせいで楽しめそうにない音楽フェスに行くかどうか」といった選択もあった。そして予想通り、被験者のマインドフルネス特性が高ければ高いほど、意思決定において、「サンクコストを受け入れられる」という結果が出た。

その後の研究で、チームはマインドフルネス瞑想とサンクコスト・バイアスとの因果関係について、研究室とオンラインの両方の環境で確認した。いずれの場合も、一方の被験者グループは呼吸法による瞑想(一種のマインドフルネス瞑想)を行い、もう一方のグループ(対照群)は「マインド・ワンダリング導入」という、通常の精神状態を再現する簡単なプロセスを体験した。

すべての被験者はその後サンクコストに関するジレンマを与えられ、決断を求められた。結果として、オンラインの実験でも研究室の実験でも、マインドフルネスをおこなった被験者のほうが、サンクコスト・バイアスへの抵抗力がはるかに高かった。

よりよく「手放す」

キニアスにとって意外だったのは、ほんの短時間の瞑想の後で得られる効果の大きさだった。

「ある実験では、対照群の被験者の50%以上がサンクコスト・バイアスにとらわれ続けていたのに対し、15分間のマインドフルネス瞑想を実施したグループでは、それが実に22%にとどまりました。これは、かなり劇的な効果といえます」

「あきらめる」こと、手放すことでよりよい選択、ひいては最善の意思決定ができることがある。そして今回、よりよい「あきらめ」には瞑想の効果が期待できる、という科学的な証明がされたわけだ。

翻訳=松本裕/株式会社トランネット 編集=石井節子

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