進まないプラスチックリサイクル、温暖化に影響も

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アメリカとスイスに拠点を置く国際環境法センター(CIEL)は、5月に発表した新しい報告書で、世界全体のプラスチック生産ならびにその焼却処理が環境に与える影響について重点的に取り上げた。

報告書のなかでCIELは、生産から廃棄にいたるまでの過程でプラスチックが大気中に放出する温室効果ガスの量について、2019年は8億5000万トンに上ると予測している。これは、500メガワット級の石炭発電所189か所が排出する量に相当する。温室効果ガス削減目標を達成しようとする国際社会の取り組みを、プラスチックから排出される二酸化炭素が脅かしているのだ。

CIELの報告書はさらに、アメリカのプラスチックごみ廃棄経路として一般的に知られている処理方法を詳しく調査。そこから、憂慮すべき事態が明らかになった。1950年以降に廃棄されたすべてのプラスチックのうち、リサイクルされた割合はわずか9%だったのだ。また、焼却処分されたのは12%だった。

プラスチック廃棄物は海を漂い、用水路を詰まらせている一方で、道路の舗装に使われることもある。活動家は当然、そうした話題に大きく注目するが、その反面、ごみ処理の過程でプラスチックがどんな末路を辿っているのかは見過ごされることがある。

プラスチックが長年にわたってほとんどリサイクルされてこなかったことを考えれば、大量のプラスチック廃棄物が埋め立て地に送られていることは驚きではない。2015年には3450万トンのプラスチック廃棄物が出たが、リサイクルされたのはわずか310万トン。焼却処理されたのは540万トンにすぎなかった。一方、埋め立てに回されたのは2600万トンだ。

プラスチック廃棄物については近年、世界的に批判されている。にもかかわらず、アメリカでリサイクルされるプラスチックが非常に少ないのはなぜだろうか。生産される全プラスチックのうち、40%を占めているのが容器包装プラスチックだ。そしてそれらは、リサイクルするうえできわめて大きな問題を抱えていることが知られている。

プラスチック製品はリサイクル可能だが、そのプロセスは、分別回収に始まり、長距離輸送、処理、再生工程と、多くの段階を踏まなくてはならないことが多い。そのためコストがかさむうえに、再生プラスチックの商業的価値は低い。つまり、プラスチックをリサイクルしても採算はほとんど取れず、政府からの多額の助成金が必要となるのだ。

必然的に、捨てられたり野焼きされたりすることも多いが、そのように不法投棄される容器包装プラスチックがいったいどのくらいあるのかはわからない。ほかの先進国と比べれば、不法投棄される割合は比較的低いとはいえ、アメリカは依然として、海にプラスチックを流出させる主要な国に名を連ねている。

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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