70歳で新分野に参入、元スキーコーチが考える「成功するリゾート」の作り方

ラグジュアリーリゾート「ヴァイスロイ・バリ」(Photo by James D. Morgan)


こういった共同作業で、アペリティフのメニューを構成しており、他のチームのスタッフも同じように関わっている。自分の仕込みが終わったら、提案用の料理をつくることもできる。こういったコミュニケーションから生まれた料理もメニューにはあり、ローカルフレーバーのソースなどにも、スタッフがつくったものが取り入れられているという。

アペリティフは新しいレストランだけに、多くのスタッフは新しく採用した人たちだが、過去にヴァンダーヴィーケンさんが指揮を執っていたオールデイダイニングのカスケードも、8割ほどが5年以上働いている顔ぶれなのだという。

周りの力を生かすチーム作り

多くのスタッフが長く働く秘密は、ヴァンダーヴィーケンさんと話しているなかでも感じられた。

インタビュー中に料理について尋ねると、その担当のスタッフを呼んで、「いま君について話していたんだ。どんなふうにつくっているか説明して」と紹介する。農園の案内も、担当のスタッフに案内を任せ、自分はそのサポートに回る。「自分が、自分が」というのではなく、そういった、若手スタッフひとりひとりを表に立たせる姿勢というのが、スタッフのモチベーションにもつながっている。

スキーで、世界トップレベルのチームを率いてきたオーナーのシュロワツカさんは、「人」の大切さをよく知っており、ヴァンダーヴィーケンさんも同じマインドを持っていると感じた。

最近リゾートで耳にするようになったのが、スモールラグジュアリーという言葉だが、インターネットの発達で、誰もが知る大手のブランドだけでなく、小さくて魅力のあるホテルが選ばれるようになってきている。


Photo by James D. Morgan

人の手によるあたたかみ。それが新しいラグジュアリーになっているのかもしれない。共に働く人を大切にする経営、だからこそゲストも大切にする。そこにある「大きな家族としての一体感」が、このヴァイスロイ・バリの、ラグジュアリーの最大の魅力だと感じた。

文=仲山今日子

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