ASIANEWS シンガポール支局長


アペリティフで提供するのは、5皿と8皿のプリフィックスメニューで、かなりの料理が数種類からの選択となる。

「決めきれないというお客様も多い。実は私たちも選びきれない。どれも美味しいから。だから、いつもあなたが今日選ばなかった料理もとても美味しいので、今度また食べに来てくださいと伝えるのです」

また、メニューの最後には、カスタマイズしたギフトもある。チョイスしたデザートに合わせて、欧米の子供のお弁当のような、ゲストの名前が書かれたブラウンの紙袋が渡される。ピーナッツバターがテーマのデザートを選んだ人には、ピーナッツバターとジャムを挟んだサンドイッチ、蜂蜜のデザートを選んだ人には小瓶に入った蜂蜜だ。

ちょっとした演出だが、名前が書いてあること、全員が同じではなく、自分が選んだ「好きな味」にまつわるギフトが提供されることで、パーソナルな、個人としての思い出に残るものとなる。



そして、スタッフ同士も、家族のように仲が良い。例えば、オールデイダイニング「カスケード」のシェフ、エガーモントさんは、ヴァンダーヴィーケンさんとはベルギー時代からの15年ほどの付き合いだし、ペストリーシェフのアレックス・マッキンストリーさんは、去年加わったばかりだが、ヴァンダーヴィーケンさんとの会話を聞いていると、まるでティーエージャーの少年2人が、趣味のバイクについて話しているような、そんな感じで料理を楽しんでいるのがわかる。

「ペストリーシェフか、ヘッドシェフ、どちらかを雇うことができたのですが、その時、大切にしたのは、人としてのフィーリング。私はアレックスとなら、うまくやっていけると思ってペストリーシェフを雇いました。そのぶん、デザート以外は自分でやらなくてはならないのですが、専門が違うので、お互いの領域をレスペクトしながら、程よい自由度もあって良いのだ」とヴァンダーヴィーケンさんは言う。

だからといって、お互いに干渉し合わないのかというと、その逆だ。

最近、マッキンストリーさんのつくったデザートは、モンキーフォレスト。チョコレートとチェリーのケーキ、ブラックフォレストをベースに、リゾートの近くにある野生の猿の保護区をイメージして、バリ島産のチョコレートを使ったムースで猿をかたどった、見た目が可愛らしいものを完成させた。

「後ろに椰子の木をつくってみたら? と言ったら、本当につくって。でも、それはやりすぎかもって、見てから言ったりね」とヴァンダーヴィーケンさん。

「自分で勧めておいて、それはないだろって、思ったよ」とエガーモントさんが返す。

そんなやり取りをして楽しげに笑い合う2人は、家も近所だ。いつも営業の後、こうして料理について話し合っては、どちらかがどちらかを家に送って帰る。

文=仲山今日子

PICK UP

あなたにおすすめ

合わせて読みたい