ビジネス

2019.06.02

議論が進むサステナビリティ 欠けているのは顧客とのつながり

Evgeniy Agarkov / Shutterstock.com


このプロジェクトは最初うまく行かなかったが、状況が変化したのは2005年8月、ハリケーン「カトリーナ」によってニューオーリンズが水没した時だ。米政府はこうした事態に備えきれていなかったが、ウォルマートは切実に求められていた食料や日用品を大きなトラックいっぱいに積み現地を訪れた。

最初に現地に現れたウォルマートの支援は、テレビで大きく報道された。これを「サステナビリティ」と呼ぶ人はいなかったものの、同社はコミュニティを積極的に支援していたため、消費者は同社と感情的なつながりを築き、ウォルマート店舗で買い物をする理由を与えられた。

現在成功を収めている企業は、ウォルマートの軌跡をたどり、売り文句よりも解決策を提供している。例えばアパレル企業は、米国人が毎年捨てている1人当たり約34キログラムの衣類を処理する方法を編み出した。誰しも、サイズが合わなくなったズボンや時代遅れになったシャツ、最初から好きではなかった服など、捨てるのはもったいないと考えて押入れにしまったままにしているものがあるはずだ。

ファストファッション大手ファーストリテイリング傘下のユニクロでは、同社の製品であればどの店舗でも、使い古した服を持ち込むことができる。中古の衣類は国連難民プログラムとの協力の下、世界中の難民らに送られる。同社によると、着ることができないアイテムはリサイクルされる。これは、ユニクロの市場の最大の顧客層である若者に訴えかけるプログラムだ。

またスウェーデンの衣料品大手H&Mは、ブランドにかかわらず不要になった服を回収している。同社は回収した全ての服を再利用あるいは再使用に分け、顧客は15%割引券を与えられる。H&Mグループは2013年以降、約8万トン近くの衣類を回収・処理した。

アマゾンのサステナビリティへの最新の貢献事例は、迅速な配送が必要な商品と、全て集めてから指定日にまとめて一緒に配送する商品を分けるサービスだ。また同社は、米百貨店大手コールズと協業し、返品の際に再包装して郵便局やUPSの店舗に持ち込まなくてもコールズ店舗で返品できる新たなサービスを提供している。

現在は、多くの素晴らしいアイデアやプログラムがある。ブランドの信念をうまく広める小売業者は、まずコミュニティ、それから世界の責任あるメンバーになるという昔ながらの方法で、顧客のブランドへの忠誠心を構築している。

サステナビリティについて口だけで議論するのは簡単だ。顧客と企業の両方にとってメリットとなるサステナビリティを実現することは、多くの企業にとってビジネスの障壁のように感じられるかもしれないが、長期的に見れば全員の利益となるのかもしれない。

翻訳・編集=出田静

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