ウォール街は同社が示した業績見通しへの対応で慌ただしくなったかもしれない。だが、極寒の環境に対応するための衣料品で知られる同社のビジネスは、実際のところ至って順調だ。小売業界では依然として、うらやましがられる存在だ。
ダニー・リース社長兼最高経営責任者(CEO)は2019年3月期の決算発表で、「わが社は成長に関して今年度、これまでで最も野心的な目標を掲げ、見事にそれを上回る結果を残した」と述べた。
リースの祖父が1957年、トロントにある小さな倉庫で立ち上げたカナダ・グースは高級ブランドに成長。2017年に上場を果たした。その自社についてリースは、「わが社の基盤は世界的に、かつてないほど強固なものとなっている」と説明している。
需要は各国で増加
カナダ・グースの通期の売上高は同期、各市場で増加した。カナダでは28.2%、米国では36.3%増加。その他の地域全体では60.5%増となった。高級品の世界最大の市場である中華圏でも、昨年から直販事業を開始した。
また、カナダ・グースは従来取り扱ってきた防寒着に加えて、軽量ダウンのコレクションを発表。春・秋向けの衣類や雨具、ニットも発売するなど、商品の幅を拡大している。
決算発表ではあるアナリストから、売上高の伸び率の見通しが2019年度(40.5%)の2分の1程度とされた理由について質問があった。これに対してリースは、「今後もわが社には成長の機会があることを確信している」と発言。自社ブランドに対する需要は「非常に健全だ」との見方を示した。
リースの見解は、恐らく正しいだろう。そうみる理由の一つは、小売業者には超えられそうな「保守的な」成長見通しを示す傾向があることだ。
リースはそのほか、「“メイド・イン・カナダ”はわが社にとって、単なるスローガンではない」「カナダでの生産に関するわが社の深い専門知識とインフラの規模は、高い競争上の優位性だ」と語った。
カナダ・グースは、ザ・ノース・フェイスやパタゴニアをはじめとするその他のアウトドアブランドと同様、「体験」を求める消費者のライフスタイルや、アスレジャーの流行から恩恵を受けている。
その他の高級ブランド各社の業績見通しも好調だ。例えば、カナダ・グースと競合する高級ダウンウェアのモンクレールは、売上高を毎年伸ばしている。2003~18年の年平均成長率は24%。昨年の売上高は、約15億8000万ドル(約1730億円)だった。