「宇宙飛行士の臓器」を守る、ギリシャ発NASA承認技術の快挙

核物理学者マリアンティ・フラゴポール博士


━━「ギリシャ危機」と呼ばれるこの深刻な経済危機の渦中にある今、大半のギリシャ人は、自国の問題すら解決することができない状況で「宇宙」だって? 贅沢を言っている場合か? 冗談じゃない、と思っているのではないでしょうか。

たしかに、自国が深刻な問題に直面しているとき、遠い宇宙で起きていることを心配する場合ではない、それは理解できます、近視眼的にはね。でも実は、宇宙に関する研究開発の成果は、地上での日常生活に応用可能で、実際、この地上にも利をもたらしているのです。

説明させてください。私たちの車のGPS、火災検知システムなどに始まる多くのアプリケーションが開発されたのは、元は、ヘラルド社のものを含む宇宙研究が端緒です。

宇宙研究は医療、航空といった「地球的な」応用の場を得ていますし、中にはわがヘラルド社によって実現された製品もあります。実際、オリオンの研究ミッションを見据えて行ってきた研究開発の成果は、テレコミュニケーションを確実に変えると思います。「リムノス」という名前のプログラムが実装され、宇宙飛行士がいつでも地球上の友人や家族とビデオ通話で直接コミュニケーションできるようになりました。ヘラルド社のCEOやある科学者も指摘していますが、「宇宙に1ユーロ投資するたび、ギリシャに7ユーロ返すことができる」のです。

宇宙開発は、私たちの国を経済的にも技術的にも救う分野です。NASAは今後30年間にわたってオリオンを使う予定であり、ギリシャがその最初の任務に参加しているという事実はすなわち、今後30年ギリシャの国を支えます。そして私たちは技術を獲得し、資本を集めて適切に投資し、雇用を創出できるこの大きな機会を逃してはならないと思います。

2018年には、ギリシャ宇宙庁(HSA)の設立と立ち上げ、宇宙政策評議会の設立、そして欧州宇宙機関プログラムへのギリシャの復帰を目指した「基礎」が築かれました。宇宙の部門は国に大きな推進力を与え、ギリシャの研究者や起業家に大きな可能性を与えると思います。

━━長く続く経済危機の中、よりよい生活を求めて50万人もの若く、優秀な人々が国を後にしました。あなた自身はなぜギリシャを去る選択をしなかったのですか?

海外に住んだ経験も長期間ありますが、状況が困難でも、私はやはりギリシャが大好きです。EGGのようなプログラムこそが、若者を国内に留めおき、彼らに海外で、ビジネスのアイデアを実装させることができると信じています。大学が研究を起業家精神と結びつけたり、企業と協力したりすると、学生はこれらの企業と仕事をしたり、自分でアイデアを実行したりすることができます。

そうすれば頭脳流出は停止することができます。国を離れても帰国できないわけではありませんが、誰でも、考え方を変えることはできるはずです。

イスラエルでは、EGGの支援の下で国内を旅行する機会がありましたが、私は2つのことに感銘を受けました。

第一にイスラエルの教育システムはユニークで、重要なのは成功ではない、努力して可能性を手に入れることが重要なのだと、幼稚園から教えるんです。この方針は、リスクをとることを恐れない子を育てますし、政府も、いったん海外に出てもやがて帰国して、専門知識と経験を国にもたらす人的資源に投資するのです。

さて、私たちはギリシャではというと、これと反対のことをしています。 われわれはアイデアを持った若い、有能な、才能のある人々に投資して教育しますが、奨学金の返済時期が来ると、育った才能は自国内ではチャンスを見つけられず、国外に出てしまうのです。

もう1つ感銘を受けたことは、「シンク・ビッグ」という考え方です。「大きく考える」ことは、私たちも真似するべきモットーです。大きく考えられさえすれば、どんな問題に遭遇しても、そしてそれがたとえ夢に直接通じなくても、人は確実に前進することができると思います。

構成=石井節子

ForbesBrandVoice

人気記事